【書評】 『わたしたちはどんな死に方をしたいのか?』 島田 宗洋 他

高度先進医療の最前線で尊厳ある「生き方」と「死に方」を問う

 

 内科救急病棟などで多くの延命治療を目の当たりにしてきた著者が、高度先進医療時代と言われる現代の医療に疑問を呈す。

 患者ではなく医療者の立場に沿ったシステム、延命のみに照準を当て患者の尊厳は度外視された現状。延命治療室に搬送される患者は病院の大きな利益という指摘にひやりとする。

 医療先進国と思われるドイツの現場が日本と酷似していることに驚くが、著者は「経済大国=医療先進国ではない」と断言。心臓死と脳死のはざま、終末期の人工栄養、永続的植物状態、命は誰のものかなど、すべての問題提起に患者の実例を挙げていることで深い説得力を持つ。私たちは死ぬこともままならない社会に生きているのか。

 救世軍清瀬病院に勤める訳者は、他院で長く心臓外科医として従事するも性善説が性悪説に変わるほどの体験をしたことで、キリスト教徒としての人間観が深まり、ホスピス緩和ケアへと舵を切る。人間の生き様や死に様を垣間見ることになった経歴は、著者と共通するという。

 気持ちが冷えるような医療の現状が書かれた本書には、人間の尊厳への強い思いが貫かれている。個人の意思「リビング・ウイル法」が制定されない限り、医療現場では患者の尊厳を無視した延命治療が続いていくだろう。命の価値について、立ち止まって考えさせてくれる1冊。

【本体2,800円+税】
【教文館】978-4-76426-726-8

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