【書評】  『平和の神との歩み』 関西学院大学神学部

「平和」を「神学」する牧師や神学生らの営み

 

 関西学院大学神学部主催のセミナーをまとめたブックレットの最新刊。第50回を数えた2016年は、「平和」をテーマに関田寛雄(青山学院大学名誉教授)、奥本京子(大阪女学院大学教授)の両氏が講演した。

 「平和の神との歩み」と題して講演した関田氏は、少年期の戦争体験や敗戦後、牧師になり川崎地区の開拓伝道を担う中で多くの在日コリアンと出会い、彼らと共に民族差別と闘った経験を語る。「神学の営みというものは、具体的に追い詰められていたり、痛みを負っているような人との関わり、文脈の中で営む時にこそ、神学が本当の神学になるのではなかろうか」

 「東北アジア地域平和構築インスティチュート」で活動する奥本氏は、「平和を創る」と題して講演。暴力には直接的暴力、構造的暴力、文化的暴力があり、わたしは関係ないという思考は、文化的暴力に含まれると解説。紛争現場を丸腰で巡回し、子どもの誘拐などを防ぐ「非暴力直接行動」は、効果はあっても結果が証明できにくいため評価が難しいが、重要な平和の仕事だという。

 後段の「報告会」では、「SEALDs」メンバーとして活動していた学生と、デモに居合わせながらコールできなかった学生、「キリスト教における正戦論」を研究する学生が発言。3人のコントラストが面白い。

 教会で平和を議論するための教材として用いたい。

【本体1,600円+税】
【キリスト新聞社】978-4-87395-723-4

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