【書評】 『勉強の哲学 来たるべきバカのために』 千葉 雅也

そもそも勉強によって自由になるとは?

 

 「来たるべきバカのために」という副題は、一見読み手を見下しているような印象を受けるが、本書の内容はその印象とは真逆だ。丁寧に学ぶことの構造をひも解いている。

 「勉強を深めることで、これまでのノリでできた『バカなこと』が、いったんできなくなります。『昔はバカやったよなー』というふうに昔のノリが失われる。全体的に、人生の勢いがしぼんでしまう時機に入るかもしれません。しかし、その先には『来たるべきバカ』に返信する可能性が開けているのです」

 著者は、現代ほど学ぶことに適した環境はないと指摘した上で勉強の深みへと読者を誘う。

 まず勉強とは「言語偏重の人になる」ことだという。「勉強によって自由になるとは、キモい人になること」である。勉強の構造における「ボケ」としてのアイロニー、「ツッコミ」としてのユーモア、第三極としてのナンセンスの関係が提示され、「決断ではなく中断」することで勉強の動機と過程を具体例で示す。信仰者であれば、ここで現代フランス思想における宗教への態度を想起させられるかもしれない。

 最後に「勉強を有限化する技術」が実際に勉強を始めて続けていくための手引きとして記される。学びたい老若男女の必携ガイド。

【本体1,400円+税】
【文藝春秋】 978-4-16390-536-5

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