【書評】 『テストヴィド神父書簡集』 中島 昭子

ハンセン病施設を創設した神父の熱い思い

 

 日本初のハンセン病施設「神山復生病院」を創設したことで名高いジェルマン・レジェ・テストヴィド神父の書簡集。著者が同神父の書簡のマイクロフィルムを持っていることを知ったカトリック横浜教区の司祭らが書簡の公開を思いつき、信徒による翻訳チームが発足、本書出版の運びに至った。

 時系列に紹介された書簡と書簡の間には、著者によりその時期の同神父の動向、赴任地での出来事などが詳しく書かれており、書簡に書かれた内容が活き活きと立ち上がってくる。

 巻末には同神父の活動と日本の教会・宣教の出来事を併記した年表も明記、日本でのキリスト教の動きが一目で理解できるようになっている。また、全書簡の解題や同神父に関する先行研究概要、今後の課題なども明記、徹底したテストヴィド神父研究本と言えるだろう。

 同神父が日本で宣教活動をした18年間(1873~91年)とは、キリシタン禁令高札の撤去から教階制の実施時期と重なる。キリスト教に対する偏見や神父への行動規制もあった中、同神父は横浜に上陸後、八王子、東海道筋の町村から岐阜までを巡り、御殿場に神山復生病院を創設する。そのパワフルな働きに信仰者の徹底した姿を見る。

 現存する同神父の書簡は18通と決して多くはない。しかし行間からは宣教への熱い思いと、「最も小さな人々」であるハンセン病患者たちへの憐れみと救済への強い意志が溢れている。

 「私は最後の恵みとして、この愛すべきハンセン病患者の中で生き、そして死ぬという特別の計らいを申し上げる次第です」

 キリストの慈しみを原点に宣教活動に従事した同神父の姿は、現代のキリスト者にも信仰とは何かを問いかける。

【本体1,200円+税】
【ドン・ボスコ社】978-4-88626-621-7

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