【書評】『原点 THE ORIGIN』 安彦 良和 他

 『機動戦士ガンダム』が好きな人なら、知らない人はいないであろう安彦良和。だが彼が全共闘の「首謀者」として逮捕され、大学からも除籍処分となった過去をもつことを知る者は少ない。

 かつてキリスト教界においても諸教会や各教団をも巻き込み、対立と分裂の禍根を残した全共闘世代。だが、彼らは禍根だけを残したのか。そもそも全共闘が目指した「革命」とは何であったのか。なぜ連合赤軍における殺人の肯定にまで至ったのか。安彦自身はベトナム反戦運動において、何をなそうとしたのか。そして、何を誤ったのか。

 彼は当時活動を共にした仲間たちにも接触を試み、聴き取りを行う。彼を含め全共闘に関わった若者たちの多くが傷ついた。そして傷ついたがゆえに、長く沈黙を守ってきた。だが、今こそ声を出すべきではないか。あの時代とは何であったのかを捉え直し、後世に残すべきではないか──。

 そこには10年かけて連載された安彦の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に通底するものがある。彼は全共闘による挫折の後、失意のうちにアニメーターとなった。ガンダムで時代の寵児になるものの、限界を感じてアニメ界を去る。もう二度とアニメには関わるまいと漫画家になったのである。だが全共闘にせよガンダムにせよ、自分が一度深く関わったものをなかったことにはできず、もう一度かたちにする。それは彼の、歴史というものへの徹底した誠実さである。

 思想とは個人が主体的に選び取るものなのか。それとも歴史の中で、必然的にそこへとたどり着くものなのか──安彦良和の語る自分史をとおして、時代のうねりと個人の闘いとの「はざま」が見えてくる。

 9月2日から公開中の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 激突 ルウム会戦』と合わせて……。

【本体1,800円+税】
【岩波書店】9784000611923

書籍一覧ページへ

TO TOP