【雑誌紹介】 『福音宣教』 8・9月号

「大逆事件」犠牲者・大石誠之助の「信仰」

 特別企画対談=これからの社会と宗教を考える。「リベラル保守の立場から」と題してイエズス会司祭の英隆一朗と東京工業大学教授・中島岳志。

 中島が《保守は「復古主義」と勘違いされますが、そうではないということです。なぜかと言えば、保守の人間観というものは、過去も現在も未来も、人間は不完全であると言う懐疑的なものだからです。復古とは、過去のある時点に戻るという考え方ですが、過去のある一点を完成された社会とみなしてしまうことは、その人間観からして難しいわけです》と。

 《同様に、未来にすべて解決された社会が用意されていない以上、「進歩」の立場も採りません。要は、復古、反動、進歩のいずれも、ある時点の人間社会を絶対視しています。保守では形而上学的な神という視点から見つめる、反省的な視点を持つことが重要なのです》。

 英が《順次変えていくことをカトリックでは「刷新する」と言いますが、その際、どこかで振り返るポイントを設定して、再帰的に物事をチェックする必要があると思います。……カトリックとしてのポイントははっきりしていて、イエス・キリストの福音や生き方です。そこに戻り、そこから今を見つめていく。……世界中のカトリックの保守、あるいは伝統主義者というのはだいたい一つ前に戻ると言う感じです。日本の右翼も同じように、日本の長い伝統と言いながらも一つ前、すなわち明治憲法の時代に戻るよう主張しています。刷新を考えるときに、日本の伝統や歴史の流れにおいて、どこを基準にすれば良いと思われますか》と問う。

 中島が《単に時間軸のある時点に戻るとなると、キリスト教原理主義になってしまいます。そうではなく、イエス・キリストに帰るというのは、水平上でありながら垂直的な回帰点です》と。そして《日本の場合、案外弱いのがこの垂直軸です。日本人は水平軸における超越性の把握には長けていて、和歌や俳句でそれを表現しています。……でも、それを照らすある超越的な一点を持つということでは、日本の宗教体系は脆弱です。これが日本の宗教の弱みであると思います》と。

 『フォーラム 「大逆事件」犠牲者・大石誠之助における「信仰」の問題』(辻本雄一)は教えられることが多い。本誌に登場するとは予想外だった。

【 本体500円+税 】
【オリエンス宗教研究所】

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