【書評】 『ルターと賛美歌』 徳善義和

 ルターは「ことばの人」として認識されることが多いが、賛美歌もルターから始まっている。ルター研究の第一人者で、日本賛美歌学会前会長でもある著者が、同出版局の雑誌『礼拝と音楽』で15回にわたり「ルターと賛美歌」について連載したものをまとめた。

 連載ではルターが作詩した50曲の賛美歌の内、30曲余りが採り上げられた。全15章のタイトルを見ると一口に賛美歌といっても、会衆賛美歌(コラール)、詩編歌、殉教者への哀悼、カテキズム(信仰問答)、クリスマスの歌などその幅の広さに改めて気づかされる。

 各章ではルターによる賛美歌を歌詞と楽譜で紹介しているが、著者による口語訳詩もたびたび登場。それは「当時ルターは民衆が歌えるように、民衆の言語の賛美歌を志していた」ことに、著者が共鳴したからだという。「これからの世代を考えれば、今後改定出版されるどの賛美歌集ももっと積極的、具体的に口語の歌詞を考え、努力しなければなるまい」 本書は分野ごとの賛美歌解説に留まらず、その歌にまつわる出来事や、ルターやその時代の歴史背景が描写されている。

 「殉教の宗教バラード」の章では、ルターの宗教改革に共鳴した2人の修道士が異端宣告を受け、火刑になったというエピソードと共に「新しい歌をわれわれは始めよう」の歌詞を紹介。また「カテキズムの学びにも賛美歌」の章では、ルターの長男ハンスが、幼少期に何かと「お父さん、これなあに?」とルターに尋ねたことから『小教理問答』が誕生し、同じ手法で民衆の信仰教育のために「カテキズム賛美歌」が作られていったと解説。

 決して厳しいだけではないルターの素顔と、神学教育を通し福音を伝えてきた著者の熱い思いが重なって見えてくる。

【本体2,400円+税】
【日本キリスト教団出版局 978-4818409712】

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