台湾司教団10年ぶりバチカン訪問 「司教任命権、交渉難航」と教皇 2018年5月29日

台湾の通信社「中央社」は、地域の状況などを定期的に報告する「アドリミナ」のためバチカン(ローマ教皇庁)に向かったカトリック司教7人による司教団が5月8日、ローマのフィウミチーノ空港に到着した、と報じた。李世明・駐バチカン大使が空港に出向き、司教団と面会したという。
海外の司教がローマ教皇に地域の状況などを定期的に報告する「アドリミナ」は5年に1回行うとされており、「10年ぶり」となった裏に、中国大陸の北京政権(中華人民共和国)との関係改善を図るバチカンの意向も反映したとも見られる。
バチカンは、欧州では唯一、中華民国と外交関係を結ぶ「国交国」。だが、今年2月には、バチカンが断交中の中国大陸と司教任命に関する枠組み協定を結ぶ準備を整えたと報じられた。
李大使は、教皇の台湾に対する心遣いに司教たちは感謝していると語った。また、司教たちは台湾とバチカンの関係をめぐって広がっている好ましくない噂の多くは真実ではないとし、教皇が過去1年間で位の高い聖職者を台湾に多数派遣していることなどを説明した。
教皇フランシスコは14日、バチカンで台湾の司教団と会談した際、関係改善に向けて協議中の中国との間で司教の任命権を巡り双方が折り合わず、交渉が難航していると説明した、と毎日新聞が台北発で報じた。会談の出席者が同紙の取材に明らかにした。
教皇は中国との関係改善に積極的で、欧米メディアは早ければ3月末にも合意に達すると報じていた。教皇は台湾司教団に対し「わたしたちは妥協しない。バチカンは司教任命権を手放さない」と説明したという。
バチカンは司教任命権は教皇にあるとの立場だが、中国は司教を独自に任命することを主張。双方に受け入れ可能な任命方式を巡る交渉が続いていた。
台湾には、バチカンと中国が関係改善で合意すれば、バチカンは台湾との断交に追い込まれるとの懸念もある。
教皇が中国に妥協するのでは、と香港の陳日君・枢機卿らカトリック幹部の懸念も表面化している。教皇の発言にはこうした懸念を打ち消す狙いもあると見られる。(CJC)