キリスト教神学は縮小、イスラム神学は拡大? 欧州の大学で進む「宗教を学ぶ意味」の再編 2026年9月26日

 欧州の二つの大学で、宗教と高等教育の関係を象徴するような動きが相次いだ。英国の名門エディンバラ大学が、牧師養成と結び付いた神学学位(B.Div、M.Div)を廃止する一方、ドイツのミュンスター大学では、国内初となる独立した「イスラム神学部」が発足。一見すれば「キリスト教神学の縮小」と「イスラム神学の拡大」という対照にも映る。しかし、それぞれの背景をたどると、欧州の大学で起きているのは宗教研究そのものの後退や宗教勢力の単純な交代ではない。むしろ、大学は宗教を何のために教え、宗教者をどのように養成するのかという制度そのものの組み替えが見えてくる。

 エディンバラ大学神学部は9月21日、神学・宗教学の教育課程再編について公表した。これに伴い、牧会や職業的な教会奉仕を志す学生を主な対象としてきたB.Div(Bachelor of Divinity)とM.Div(Master of Divinity)を終了する。英キリスト教メディア「プレミア・クリスチャン・ニュース」も25日、「エディンバラ大学がDivinity学位を廃止」と報じた。

 ただし、大学から神学そのものが消えるわけではない。大学側は、神学、宗教、哲学、倫理を中心とする教育研究は引き続き重要な柱であり、今年も国内外から200人以上の新入生を迎えたと説明。2027、28年には学生の関心の変化を踏まえた新課程も開設する予定で、「神学と宗教」の教育研究を将来に向けて再構築するとしている。

 直接の契機となったのは、スコットランド国教会による牧師養成制度の再編だ。同教会は今年5月の総会で、グラスゴー大学トリニティ・カレッジを、牧師と執事を養成する中心的な教育機関に選定した。新たな養成課程は2027年9月から始まり、対面授業とオンラインを組み合わせる。各地の候補者がグラスゴーへ移住しなくても学べる仕組みとし、共通カリキュラムや実習、神学的省察をこれまで以上に統合する方針だ。

 エディンバラで起きているのは、「神学を学ぶ人がいなくなったから神学をやめる」という単純な縮小ではない。大学における神学・宗教研究と、教会が責任を持つ職業的な牧師養成とを整理し、後者を一つの拠点へ集約する動きと見る方が実態に近い。

 一方、ドイツでは逆方向にも見える動きが進んでいる。ミュンスター大学は9月25日、約350人が出席する式典を開き、国内初の独立した「イスラム神学部」の発足を祝った。前身となるイスラム神学センターは2012年に設置され、今年7月1日付で正式な学部へ昇格。冬学期から本格的に始動する。4人ずつの教授と女性教授が所属し、現在約450人が教員養成課程や神学の学士・修士課程で学んでいる。

 ミュンスター大学にはすでにカトリック神学部とプロテスタント神学部があり、そこへイスラム神学部が加わる。2027年春には三つの神学部が「神学・宗教研究キャンパス」に集まり、世界有数の宗教研究図書館も整備される予定だ。大学は、宗教間対話だけでなく、科学、政治、メディア、文化などと宗教を結ぶ拠点にする構想を掲げている。

 注目されるのは、イスラムを研究「対象」とするだけではなく、イスラム自身の内部から神学を構築する学問として大学制度の中に位置付けたこと。創設学部長のムハンナド・ホルヒデ氏は式典で、イスラム神学には「科学の完全な自由」が必要だと強調。イスラムが社会の課題に何を提供できるのかを示し、「人間の大きな『私たち』」に貢献する必要があると訴えた。大学のヨハネス・ヴェッセルス学長も、学部としての独立性が増すほど責任も増すとの認識を示した。

 カトリック、プロテスタント双方もこの動きを歓迎している。ドイツ司教協議会会長でミュンスター司教のハイナー・ヴィルマー氏は、イスラム神学が国立大学に制度として存在することは、市民社会や国家、他宗教からの「承認と信頼」を意味すると評価。ヴェストファーレン福音主義教会議長のアーデルハイト・ルック=シュレーダー氏も、イスラムにキリスト教神学と「対等な」学問的発言の場を与える意義を強調した。

 二つのニュースを並べると、興味深い逆説が浮かぶ。キリスト教の長い伝統を持つエディンバラでは、大学が担ってきた牧師養成の一部が教会主導で再編・集約される。その一方、ミュンスターでは、移民の増加とともにドイツ社会に定着してきたイスラムが、大学内部に独立した神学の制度を獲得する。

 しかし共通しているのは、宗教を大学から排除する方向ではない。エディンバラ大学は神学・宗教学を残し、むしろ新しい教育課程を準備している。ミュンスター大学は三つの神学を同じキャンパスに集める。宗教を信者だけの閉じた領域として扱うのではなく、倫理、歴史、社会、政治、文化と関わる公共的な知として大学の中に置き直そうとしている点では、二つの動きはむしろ重なる。

 牧師養成そのものも安泰ではない。韓国では、総神大学校の朴成奎(パク・ソンギュ)総長が、2039年までに教会の半数で主任牧師の招聘が困難になる可能性を指摘した。背景には牧師の大量退職だけでなく、神学大学院への志願者減少がある。かつて志願者が定員を大幅に上回った総神大神学大学院も2023年度に開校以来初めて定員割れした。

海外一覧ページへ

海外の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘