【宗教リテラシー向上委員会】 イフタールプログラムとモスク建設問題 サイード佐藤裕一 2026年3月21日

今年の日本でのラマダーン月(断食月)は、西暦2月19日からだった。日本各地のモスクでも、日没の断食明けの食事「イフタール」時間に合わせた特別なプログラムが催されることが多い。そのような中、神奈川県綾瀬市の文化センターのホールを借りて行われた、スリランカ人ムスリムコミュニティの子ども向けプログラムに参加する機会を得た。
同地区でムスリム向けのインターナショナル・スクール校長を務める人物が担当した英語話者向けと、私が担当した日本語話者向けが、別々のホールにて同時進行で行われた。神奈川県の周辺地域にはスリランカ人ムスリムが多い。子どもたちは平日の夕方とはいえ、男女合わせて100人以上の参加があった。日本語話者の方が多かったようだ。
子どもたちは小中学生だが、このような広い年齢層にまとめて話をする機会は在日ムスリム社会では珍しくない。子どもたちの多くは断食しており、疲れているだろうから、賞品つきのお楽しみクイズ会のような形式にする。
子どもたちのほとんどは両親共にスリランカ人だが、日本で生まれ、日本の学校に通っている。にもかかわらず、日本人とはかなり性格が違うのが面白い。好奇心が非常に旺盛。そういった部分を含め、子どもは皆かわいいもの。
この地域は、昨今メディア上でもモスク建設反対問題で話題になることが多い藤沢市も近い。そこからの参加者もいた。この日のプログラムはムスリムの子ども対象だったが、このようなプログラムを、藤沢市を含む近隣住民の日本人の方々に参観してもらうのもよかったのではないかと、終わってから感じた。
最近、藤沢市のモスク建設予定地近くに住む日本人の方から、相談のお手紙をいただいたことがあった。特にモスク建設反対というわけではなさそうだったが、その内容は見知らぬ外国人とその宗教・習慣に対する不安や疑念であふれていた。当然のことだと思う。

「分からなさ」それが近隣住民の方々にとって最大の不安の種になっている。モスク建設に限ったことではなく、人間関係はすべて信頼に基づくものである。その不安要因の一つひとつを丁寧に、時間をかけてでも取り除いていき、信頼関係を養っていくことが求められている。それはやり方によっては簡単に行くかもしれないし、そう簡単には行かないかもしれない。
今回のプログラムを企画運営したスリランカ系ムスリムの保護者たちからは、そのチームワーク、礼儀正しさ、ルール遵守の徹底など、ポジティブな面がたくさん見て取れた。子どもたちも無邪気でかわいい。このような光景と空間の共有、交流の機会によって、人の距離は一気に縮むものだ。逆に物理的距離が近いにもかかわらず、接触や交流が不足していると、疑心暗鬼が生じるのもやはり人の性である。
預言者ムハンマドは言った。「隣人がその口と手から安心できないような者は、天国に入らない」。ムスリムとはまず自分自身が平安であるだけではなく、周りにも平安と安心感を広めていくべき存在である。少数派であるムスリム側が近隣住民のこの不安にもっとセンシティブになり、そしてその解消のため積極的に行動に移さなければならない。

さいーど・さとう・ゆういち 福島県生まれ。イスラーム改宗後、フランス、モーリタニア、サウジアラビアなどでアラビア語・イスラーム留学。サウジアラビア・イマーム大卒。複数のモスクでイマームや信徒の教化活動を行う一方、大学機関などでアラビア語講師も務める。サウジアラビア王国ファハド国王マディーナ・クルアーン印刷局クルアーン邦訳担当。一般社団法人ムスリム世界連盟日本支部文化アドバイザー。














