サグラダ・ファミリア「イエスの塔」完成 国内メディアも注目 2026年6月25日

スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリアで6月10日、中央にそびえる「イエス・キリストの塔」の祝福・完成式典が行われ、教皇レオ14世がミサを司式した。この日は、同聖堂の設計に生涯をささげた建築家アントニ・ガウディの死去からちょうど100年に当たる。
高さ172・5メートルの同塔は、17メートルの巨大な十字架を頂く。これによりサグラダ・ファミリアはドイツのウルム大聖堂を抜き、世界で最も高い教会建築となった。沿道には地元警察の発表で約12万人が集まり、教皇を迎えた。ミサ後には塔を照らす光と音楽、ドローン、花火による演出が行われ、夜空にはガウディの肖像と「まず愛、その後に技術」との言葉が浮かび上がった。
教皇はミサに先立ち、地下聖堂にあるガウディの墓を訪れて祈った。ミサにはスペイン国王フェリペ6世夫妻、政府や自治州の代表、司教、司祭、他のキリスト教共同体や諸宗教の関係者らが出席した。
カタルーニャ語とスペイン語を交えて説教した教皇は、サグラダ・ファミリアを単なる観光名所や記念建造物ではなく、「今も建設されている神殿」と表現した。未完成であることは欠陥ではなく、神の計画に参与し続けるという約束を示すものだとし、キリストを土台とし、頂点とする建物の姿を、信仰者一人ひとりからなる教会共同体に重ねた。
さらに、塔の頂に掲げられた十字架の意味を、現代社会の現実に結び付けた。「イエスを信じながら戦争を促すことはできない。罪のない人を殺し、苦しむ人、泣く人、貧困から逃れる人を見捨てることもできない」と語り、十字架は「後の者が先になり、罪人が聖なる者へ、死者が復活へと導かれる」希望のしるしだと強調した。
教皇は、昼には太陽を反射し、夜には地中海を望む灯台のように街を照らす十字架について、「慈愛の旗印」であると説明した。その上で、サグラダ・ファミリアが世界一高い教会になったのは、世俗的な順位を誇るためではなく、十字架の光によって神の民の歩みを導くためだと述べた。
また同聖堂を、キリストの降誕、受難、復活を石と彫刻によって伝える「霊的な巡礼路」と位置付け、「石、色、光でできた雄弁なカテケージス(信仰教育)」と評価した。映像が社会を大きく動かす時代だからこそ、芸術と美は福音を伝える特別な回路になり得るとの認識も示した。
式典では、視覚障害のある13歳の少女バレンティナさんが、教皇に塔の建築的特徴を説明する一幕もあった。説明を聞いた教皇は、バレンティナさんにロザリオを贈った。「目に見える高さ」を祝う式典で、異なる方法で建築を理解し伝える少女が案内役を務めたことは、聖堂を万人に開かれた信仰の場とする理念を象徴する場面となった。
サグラダ・ファミリアの建設は1882年に始まり、翌年、当時31歳だったガウディが設計を引き継いだ。ガウディは以後40年以上にわたり建設に携わり、晩年は仕事を同聖堂に限定した。2025年には、教皇フランシスコによってキリスト教的徳を英雄的に実践したことが認められ、列福候補者に与えられる「尊者」の称号を受けている。
イエス・キリストの塔は2018年に本格的な建設が始まり、今年2月20日に十字架の最上部が据え付けられた。主任建築家のジョルディ・ファウリ氏は、塔の完成を「単なる工事の一区切りではなく、長年にわたるガウディの遺産の研究と、聖堂完成への具体的な約束の結実」と説明する。ガウディが現在の塔を見れば、構想が実現しつつあることに「満足しただろう」とも語った。
塔の建設を担当した建築家マウリシオ・コルテス氏によると、石材と鋼材を組み合わせたプレストレス構造やコンピューターによる設計技術は、ガウディの構想から離れるためではなく、むしろ現代において忠実に実現するために用いられた。ガウディが塔を市内のモンジュイックの丘より低く設計したのも、人間の作品が神の創造を超えてはならないとの考えによるという。
日本国内でも関心は高く、NHKは完成前後に関連番組を集中的に編成した。6月10日放送の「クローズアップ現代」は、聖堂が実施する移住者・難民の無料見学プログラムや、観光客の増加に向き合う地域住民を取材し、サグラダ・ファミリアを建築史上の偉業だけでなく、祈りと地域社会が交差する場として取り上げた。翌11日には聖堂内部から生中継し、世界で初めて撮影したという「イエスの塔」内部の映像も紹介した。「解剖!マスターピース」「歴史探偵」「NHKアカデミア」などでも関連企画を展開し、28日には建設現場への長期密着取材をもとにしたNHKスペシャルを放送する予定。一連の番組は、サグラダ・ファミリアを「完成間近の観光名所」として消費するだけでなく、そこに集う移住者や住民、建築に携わる人々の祈りを描いた点で注目される。
ただし今回完成したのは中央塔の外観であり、サグラダ・ファミリア全体の工事が終わったわけではない。塔内部のエレベーターや階段、十字架内部の「神の小羊」像などの整備は2027年から28年まで続く。正面入口となる「栄光のファサード」や礼拝堂、回廊、大階段にも工事や計画上の課題が残り、聖堂全体の完成にはなお年月を要する見込み。














