【映画評】『チャンス』/『逆噴射家族』 意外さの中にキリストが立っている

 『チャンス』(Being There)金持ちの屋敷内でひたすら庭師を務めてきたチャンスは、読み書きもできず、楽しみはテレビ鑑賞だけ。主人の死により家を追われて町を彷っているところを、車に接触される。それが大富豪の妻の乗る車で、物語はここから大きく展開する。

 無垢な主人公が草木の手入れについて語る素朴な言葉に、やたら含みを読み取る周囲の人々。そんなチャンスが、ついに大統領候補とされていくまでを静かなタッチで描く。そして、福音書の一場面を思わせるようなラストシーンには胸を突かれる。

 

 『逆噴射家族』。隠れた名作邦画を多数輩出した日本アート・シアター・ギルド製作作品で、監督は石井聰亙。アパート暮らしから、念願かなって一軒家へと転居した小林勝国一家の崩壊、そして期せずしての再生への希望を描く、家族内の戦争コメディー。

 一夜の激しい戦闘の果てに、ローンが残った家を家族全員で破壊し尽くす。その後にわずかに流れるラストシーンの清々しさと解放感は、この映画の醍醐味。逆説的な真理とはこういうことか。意外さの中に、真の福音が存在すると示す作品。

 

「Ministry」掲載号はこちら。

【Ministry】 特集「教会教育を問う--子どもと教会の未来」 5号(2010年3月)

映画・音楽・文化一覧ページへ

映画・音楽・文化の最新記事一覧

TO TOP