「歴史の真実に目を背けるな」 日本同盟基督教団 信教の自由セミナーで山崎龍一氏 2012年2月25日

 「信教の自由を守る日」の2月11日、日本同盟基督教団「教会と国家」委員会(朝岡勝委員長)は、キリスト者学生会(KGK)総主事の山崎龍一氏=写真=を講師に迎え、「キリスト者と信教の自由」をテーマに「信教の自由セミナー関東地区集会」を同教団世田谷中央教会(東京都世田谷区)で開催した。約60人が出席した。

〝罪は無自覚という形で〟

 山崎氏は、「『それ』は、信仰的なことでしょうか?――学生との対話から考える靖国・君が代・戦争責任~教会に仕える次世代に伝えたい信仰の自由~」と題して講演。戦時中に教会が礼拝で「君が代」を歌い、神社参拝をしてきた歴史を、KGKの集会で講師として学生たちに語ってきたことを振り返り、「もし語ることの重さから逃げ、神に従うことを曖昧にし、歴史の真実から目を背けてしまうなら、教会はまた同じ過ちを繰り返してしまう」と主張した。

 1985年、当時学生だった山崎氏は、国立赤城青年の家で開催されたKGKの全国集会に参加。同施設のプログラムの一つである「朝のつどい」で、「日の丸」を掲揚し、「君が代」を歌うKGK学生の様子と、それに反対する学生の姿を目にし、「日の丸・君が代」の問題に直面することになった。

 93年、台湾で開かれた国際福音主義学生連盟(IFES)の東アジア地区大会で、KGKは「侵略戦争」についての謝罪を行ったが、韓国の参加者たちは、KGKが過去の罪について十分に認識していないとして、退席する事態となった。山崎氏がKGKの主事になった年の出来事であった。これを契機にKGKは、アジアの学生との交わりを深めながら、靖国、君が代、戦争責任などの問題を学び、全国集会でも取り上げてきた。

 97年の国立中央青年の家を会場にした全国集会では、準備の段階で、「日の丸・君が代」を伴う「朝のつどい」に参加しないことを条件として申し出たことにより、会場の使用許可を巡って交渉が難航した。交渉を担当した山崎氏に対しては、「争うなんて証しにならない」「『キリスト者は君が代を歌うな』という全体主義にならないでほしい」「KGKは政治的な活動をすべきではない」といった反論がキリスト者から寄せられた。

 「いずれも、教会の歴史である信仰告白、あるいは聖書を土台にした反論ではない。信仰告白と教会の歴史の問題を認識できなければ、すべてはOKであり、すべては崩れてしまう」と山崎氏。「罪は無自覚という形でわたしたちに迫ってくる。無自覚との対決は、静かに祈りつつ、終末的な視点を持って、わたしたちの歴史と現在を検証し、『もっともらしい反論』の過ちを見抜き、わたしたちの信仰告白を生き続けていくこと」と自身の考えを明らかにした。

責任果たせる歴史観・世界観を

 教会で育った青年たちにとって信仰生活・教会生活とは、「安全に忠実に礼拝に出席することであり、熱心に奉仕をすること」であり、それ以外は「この世のこと」と考えるのが一般的な本音だと山崎氏は指摘。「信仰は内面的な人格を形成し、社会ではその内面を土台にして、良質的な人生を送ることが彼らにとっての信仰。それでは社会的使命を果たすことはできない」とし、熱心さだけで知恵がない信仰は、この世に飲み込まれてしまうと危惧した。

 また、靖国神社が肉親を失った人々の慰めの場となっていることに注目し、「教会は、教会員にさえ多くおられたであろう戦死者の方々にどれだけ慰めの言葉を語っていたのだろうか」と疑問を呈した。さらに、過去のことを「あの時は仕方なかった」と考えるならば教会は普遍性を失ってしまうと述べ、過去の罪を罪と認めて悔い改めることが必要だと説いた。

 その上で、KGKの考える学生伝道が、「4年間の学生の歩みの中に、人生の基礎となる、福音による物の見方、人生観の土台を形成すること」にあると述べ、「この世との戦い方を知らずして卒業していくならば、やがて彼らは敗北していく」と主張。敗北とは信仰を失うことではなく、「信仰に関しては誠実を、信仰以外のことには常識を、という生き方をすること」だとし、「この世性に無自覚であってはならない」と強調した。

 最後に対話の必要性を訴え、戦後世代の者は先輩たちに、「本当にあの時、神社参拝はおかしいと思わなかったのですか」「戦後長い間無自覚に過ごしたことについてはどう思っているのですか」と勇気を持って問いかけたいと述べた。そして、「地上において教会が真にキリストの教会であるために、そして遣わされた日本において、キリスト者として責任を果たせる歴史観と世界観をともに学ぶ日としてこの日を覚えたい」と結んだ。

 日本同盟基督教団「教会と国家」委員会は同日、奈良県生駒市の同教団生駒めぐみ教会でもセミナーを開催。特別支援学校教員の奥野泰孝氏が「強制・競争・管理の学校教育に対峙して――もしこの人たちが黙れば、石が叫びだす」と題して講演した。

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