翻弄される被災地 続く模索(2) 次世代への責任を復興の基に 2021年3月23日

 被災地支援に携わってきた宗教者と宗教学者が、それぞれの役割を模索するシンポジウムが3月2日、東北大学川内北キャンパス(宮城県仙台市)で開催された(東北大学大学院文学研究科実践宗教学寄附講座、京都大学こころの未来研究センター震災関連プロジェクト、宗教者災害支援連絡会主催)。

 「宗教者と宗教学者は災害とどう向き合うか」と題して基調講演した山折哲雄さん(宗教学者)は、震災後、「宗教的言語が頓挫している」という現状認識のもと、「多くの災害を経験した日本人が本来的に持っているはずの倫理性、宗教性を深めてこなかったからこそ、原発を54基も建てるという事態にまで至った。政府や東電を糾弾しても解決できない。日本の宗教者と宗教学者の問題ではないか」と提起した。

 さらに、事故調査委員会における主題はもっぱら責任の所在であり、現場作業員の命の問題についての言及はほとんどなかったと指摘。「最小限度の犠牲はやむをえないと考える文明を引き受けるのか、全員救済することに伴う負の遺産を引き受けるのか。そうしたジレンマの中で何が可能かを考えるのが、宗教者、宗教学者ではないか」と問いかけた。

 鎌田東二さん(京都大学こころの未来研究センター教授)による司会でパネルディスカッションも行われ、金田諦應さん(通大寺住職)、川上直哉さん(「仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク」事務局長)、藤波祥子さん(八重垣神社宮司)、黒住宗道さん(WCRP日本委員会理事・黒住教副教主)、稲場圭信さん(大阪大学准教授)、黒崎浩行さん(國學院大學准教授)の6人がそれぞれの支援、研究活動について報告した。

 日基教団仙台市民教会牧師の川上さんは、福島における健康被害について「放射能のせいかどうかはわからない」と強調しながらも、大きな不安と絶望が被災者を苦しめ、孤立させていると指摘。震災後、「情報」「祈り」「さびしさ(無力さ)」の持つ力を改めて実感したと語った。

 各発言に次いで玄侑宗久さん(作家・福聚寺住職)、島薗進さん(東京大学教授)、岡田真美子さん(兵庫県立大学教授)、蓑輪顕量さん(東京大学教授)がコメント。福島県三春町に住む玄侑さんは、原発事故で引き起こされた深刻な分断が放置され、風評被害が解消されていないという実態を報告し、除染そのものが抱える「矛盾」について「被曝しながら除染に従事する方々は、比較的安全だと思っている。しかし、安全ならばなぜ除染するのか。『危険だ』と思う人と『安全だ』と思う人が、両方いてちょうどいいという複雑な状況」と明かした。

 岡田さんがひとりの母親として「わたしたちは、これだけの大惨事が引きこされても、まだまともに見ようとしていない。何ひとつ改善されていないのに、『早く忘れたい』という空気が日本中にある」「すべての復興の基礎に、次の”いのち”にどう責任を取るのかという問いがあるべき」と訴えると、箕輪さんも「仏教の価値観として、いま生きている人々の幸せを願うのと同時に、次世代の幸せも願うという視点も大事にしなければ」と応じた。

翻弄される被災地 続く模索(3) 報じられない実情にも目を 2021年3月23日

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