映画「ヴァチカン美術館――天国への入口」公開 ワイン片手にキリスト論 美術、メディア、教会の切り口から 2015年2月28日

 年間500万人が訪れる「ヴァチカン美術館」を初めて3D映像化したことで話題の映画「ヴァチカン美術館――天国への入口」の公開を記念したトークイベントが2月14日、下北沢の書店「B&B」(東京都世田谷区)で行われた。『ヴァティカンの正体』(筑摩書房)の著者である岩渕潤子氏(青山学院大学客員教授)、同志社大学卒の玉置泰紀氏(KADOKAWAウォーカー情報局長兼関西ウォーカー統括編集長)に加え、キリスト新聞社の松谷信司氏が登壇し、「ヴァチカンの秘密、謎、あるある…」と題して語り合った。

 「ヴァチカン美術館」は、市国内にある新旧15もの美術館群の総称で、500年以上にわたる歴代ローマ教皇の収集品を収蔵展示する世界最大級の美術館。

 ルネサンス三大巨匠(ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ラファエロ)から、ジオット、カラバッジョ、ゴッホ、シャガール、ダリまで、数々の貴重な作品が収められており、とかくカトリックに占有されがちなキリスト教美術の世界に、信仰の有無を問わずあらゆる人々を誘い、魅了し続けてきた。

 この映画は、初めて同館の公認により、最先端4K(ハイビジョンの4倍のきめ細かさ)/3Dカメラで館内の所蔵品を撮影したもの。古代ギリシャの彫像や高さ20mの天井画など、そのスケールの大きさゆえに肉眼では見えにくい細部の凹凸や筆致まで、高感度のカメラでとらえる。はるか昔に止まったはずの時間が、今にも動き出しそうな躍動感をもって描き出されている。

 日本語版ナレーションは、テレビ朝日系列「世界の車窓から」の石丸謙二郎が担当。繊細な映像美に重厚さを加え、まるでガイド付き拝観ツアーのような臨場感を演出している。

 この日は、映画の感想や見どころにも触れながら、実際に現地をたびたび訪れている岩渕氏が、ヴァチカンの歴史や位置づけ、ルネサンス期の宗教と政治、芸術家たちを資金的に支えたメディチ家の財力などについて解説。玉置氏は、本作で案内役を務めたアントニオ・パオルッチ館長の息子と出会った経験などについて写真を交えながら紹介した。

 松谷氏は、「ダ・ヴィンチ・コード」から始まり、『聖☆おにいさん』や『ふしぎなキリスト教』、一般誌でのキリスト教特集、NHKでの「八重の桜」「軍師官兵衛」「花子とアン」に至るまでのキリスト教「ブーム」を振り返り、「信仰は持たないが、文化・教養として知りたいというニーズが広がっている」と話した。

書店内でのトークイベントで発言する(左から)玉置、岩渕、松谷の各氏

 「ヴァチカン」の世界戦略における美術品の位置づけに関する問いに対し岩渕氏は、トリエント公会議(1545年)で、「美術品は神に祈るための助けとなる媒介であり偶像ではない」と定義されたこと、ルネサンスを経て現世での権力を失っていったカトリック教会が生き残るために、文化的存在に変容することで影響力を維持するとい術を選択したと応答。「ヴァチカンが生き残ってきた最大の理由は、時代と共に生まれ変わってきたから。原理的で世の中とずれてしまうと受け入れられない。組織の中にイノベーションを受け入れるためのシステムが組み込まれている点が、グローバルでいられるキリスト教の強み」と語った。

 「本作が最新鋭の映像技術に取り組んだことも、教皇がツイッターを利用し、図書館が資料の電子化に乗り出すといったカトリック教会の先進性を象徴するもの」と玉置氏。話題は多岐にわたったが、美術、メディア、教会などの切り口から「ヴァチカン美術館」を含むキリスト教談義に花を咲かせた。

「シモキタ」で盛り上がる

 会場では、赤ワイン「レオナルド・キャンティ」も振る舞われ、店内にあふれた約40人の参加者が、スタッフ手製のサンドイッチを片手に3人のトークに聞き入っていた。参加者のうち信徒は数人だけだったが、イタリアへの渡航経験者は3分の1を超えていた。工学博士で4Kの開発にも携わった池上徹彦氏(会津大学元学長)も参加し、解説を加えた。

 終了後、来場した聴衆からは「3人の話で初めて知ったこともたくさんあり、とても刺激的な2時間でした。またこんなイベントがあれば参加したい」「映画を観るのがますます楽しみなりました。サンドイッチもすごく美味しかったです」などのコメントが寄せられた。

 映画はカトリック中央協議会広報推薦。2月28日、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー。

【作品情報】「ヴァチカン美術館――天国への入口」 監修 アントニオ・パオルッチ(ヴァチカン・ミュージアム館長)/監督 マルコ・ピアニジャーニ/出演 アントニオ・パオルッチ、パオロ・カシラギ/日本語版ナレーション 石丸謙二郎/配給 コムストック・グループ/配給協力 クロックワークス/2013年/イタリア/カラー/デジタル3D上映/66分

 

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