【映画評】 『パウロ 愛と赦しの物語』 「前科者」パウロが背負い続けた過去 Ministry 2018年8月・第38号

 「わたしはこの道を迫害し、男女を問わず縛り上げて獄に投じ、殺すことさえしたのです」(使徒言行録22:4)

 パウロは現代でいうところの、殺人の前科を持ちつつ社会復帰した人間のようでもある。確かに迫害者パウロは回心した。しかし、目が見えなくなったパウロを世話したアナニアをはじめ、パウロが合流した相手は、かつて彼が殺した人々の遺族であるか、その関係者であるかであった。加害者が被害者遺族、関係者と行動を共にすることになった。

 回心すれば過去はリセットされるのか。パウロは過去のことなど忘れて、いわば能天気に伝道したのか。いくらなんでも、それは無理だろう。パウロは自分が手をくだした人々、自分の目の前で血を噴き出して死んでいった人々、その一人ひとりの顔を、自らの死の瞬間まで忘れることはなかったのではないか。

 本作に登場するパウロの姿は、基本的にこの「前科者」の像を追っている。人々を殺してしまったという取り返しのつかない過去に、彼は繰り返しうなされる。悪夢の中、死者たちが陰鬱な顔でパウロに迫る。だが斬首されたパウロが天において彼らと再会したとき、ついに彼らは笑顔でパウロを迎え入れる。そして人々の向こうに、あの人が──。

 医師であるルカ(映画『パッション』でイエス役を演じたジム・カヴィーゼルが好演)が牢獄に侵入し、死刑直前のパウロに直接聴き取りを行っていることや、パウロがテモテへ届ける手紙をルカに託す場面など、聖書の記述とは異なる描写もある(テモテへの手紙一および二は、テトスへの手紙と一括して「牧会書簡」と呼ばれ、パウロの名を借りた偽書である可能性が高いとされる)。また、パウロを描き出すことに力を入れ過ぎたせいか、ローマの初期キリスト教会の描写はやや散漫で雑である。

 とはいえ、それらの難点を措いても、本作は「悔い改めるとは何か?」を考える素材としてうってつけである。(牧師 K・N)

 11月3日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

【クリスチャン向け試写会のご案内】
 11月の公開に先立ち、東京(いのちのことば社中野本社ビル・9月4~8日、11~14日)、大阪(大阪クリスチャンセンター・9月29 日)、沖縄(未定)で教会関係者向けの試写会を予定しています。ご希望の方は左記のメールアドレスに、お名前、教会名、お住いの都道府県、アドレスをお送りください。もれなく試写状をお送りいたします。
biblemovieministry@gmail.com

監督 アンドリュー・ハイアット
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2018 年/アメリカ/ 108 分/カラー
公式HP https://paul-love-movie.tumblr.com/

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