伝える「ゆるさ」は世界一? 話題の上馬キリスト教会に直撃!! ツイッター戦略の裏側を大公開 2018年12月25日

 ツイッター(Twitter)のフォロワー数が10万人に届く勢いで伸び続ける上馬キリスト教会@kamiumach (単立、東京都世田谷区)。そのアカウントを運営する「まじめ担当」こと横坂剛比古さんと「ふざけ担当」渡辺レオンさんを招いた公開講演会「世界一ゆるいキリスト教の授業」が12月8日、同大学池袋キャンパス(東京都豊島区)で行われた(立教大学文学部キリスト教学科、キリスト教学研究科主催)。

 現在、同教会のツイッターフォロワー数は約8万弱。2015年2月に立ち上げて以来、最高年間インプレッションは、約3億。日本国民の約3倍にリーチしたことにもなる。「同数のチラシを無料でばらまいたのと同じ効果」と渡辺さん。11月末には、『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』(講談社)=写真右=が出版され、発売から6日で早くも重版出来となり、若者を中心に話題を呼んでいる。

 ツイッターを活用した発信の目的について渡辺さんは、一貫して「ノンクリスチャンの方に礼拝に参加してもらうこと」だと言い切る。それは「信じたことのない方を、どうして呼び求められよう。聞いたことのない方を、どうして信じられよう。また、宣べ伝える人がなければ、どうして聞くことができよう」(ローマ10:14)に依拠している。

 2人はターゲットであるノンクリスチャンを知るため、「クリスチャンやキリスト教に対するイメージ」についてツイッター上で問いかけ、約500人から回答を得た。その結果、キリスト教は「他の宗教を認めない」「怪しい」「清く正しく美しい人の集まり」「何をしているのか謎、教会は入りづらい」と思われていることが分かった。中でも渡辺さんが一番驚いたのは「キリスト教は富裕層の宗教だ」との意見だったという。

 ターゲットの考えを知った2人は、消費者購買行動を体系的に表した「AIDMA理論」に基づいて、戦略を練る。この理論では、消費者が実際に購買行動を起こすまで、Attention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)のプロセスを経ると仮定する。上馬キリスト教会のツィッターにあてはめると、ツィッターで興味をそそりそうなことをつぶやき、「面白そうだな」といった欲求を引き出したら、繰り返し「記憶」に残るツィートをすることで、最終的には「礼拝に出席する」という行動を起こさせる流れになる。

 ツイートの頻度は1日5~7件。聖書に関する豆知識などを文字通り「ゆるく」発信し続けてきた結果、礼拝の参加者が約2倍に増えたという。教会に初めて来る新来会者、教会から長く離れていた人々など来訪者はさまざまだが、渡辺さんは「『教会って怪しい所だと思ったけど、結構面白いじゃん』と言ってもらえる瞬間が一番うれしい」と話す。

 「多くの教会は、『AIDMA理論』で言えば、最後のAction(礼拝にきてもらう)だけを求めていないだろうか。神様からいただいたギフトがあれば、それを使って何かお返しすればよい。わたしたちには、ツィッターというギフトがあった。それぞれのギフトを生かした伝道を」と呼び掛け、講演を結んだ。

 後半は、上馬キリスト教会の2人に加え、立教大学教授の西原廉太さん、フォロワーでもある文学部の阿部遥さん、大学院生の工藤万里江さん、本紙編集長の松谷信司が登壇してパネルディスカッションを行った。

 同大の公開講演会は、年に2回、神学者や研究者などを講師として迎えて開催することが多いが、今回は学生からこの企画が持ち上がった。

「俗なるものを聖なる場所には持ち込まない」

工藤 日本人はキリスト教に関心があると感じています。『聖☆おにいさん』も聖書の豆知識などがちりばめられていますが、ノンクリスチャンの若者にも受け入れられています。

横坂 わたしたちも、初めはツイッターで実際に教会に来る人がいるなんて考えてもみませんでした。ところがある日、「ツィッター見て来ました」という方が現れ、そこからどんどん増えていったという感じです。わたしたちが伝えているのは、クリスチャンだってツィッターもするし、普通の生活もしているという楽しい姿です。もしこれが神様の意思に添わないなら、どこかで道は閉ざされるはずです。

松谷 上馬キリスト教会の特徴は、ゆるいツィートをしながらも、実際の礼拝は厳かで静かなごく普通の教会だということ。そのギャップも良いと思います。礼拝もゆるい感じだと、何も残らなくなってしまう。

西原 ゆるい礼拝を期待して、逆に「えっ? 普通の教会?」という風にがっかりして帰る人はいませんか?

渡辺 今まで聞いたことはないですね。以前、横坂さんが「わたしたちは、聖なるものを俗なる場所に持ち込みはするが、俗なるものを聖なる場所には持ち込まない」と言ったことがあって、まさにそうだなと思います。自分の力でどうこうとは思っていなくて、だからこそ、礼拝は絶対にぶらさない。

「ふらっと入れる」百貨店と同じように

西原 フォロワーでもある阿部さんは、教会に行ってみたいと思ったことはありますか?

阿部 上馬のツィッターを毎日見ていて、クリスチャンの生き方って楽しそうだなとは思います。研究対象として、礼拝に行ってみたいと思いますが、洗礼云々とはちょっと違う気がします。

松谷 信者数は1%未満ですが、教会に見学に行ってみたいと何となく思っている人は、日本にも少なくないと思います。「ポケモンGO」のためでもいいし、クリスマスのデートコースの一つとしてでもいいし、とにかく教会へ足を運んでもらえるのは歓迎すべきことだと思います。でも、例えば初めて足を踏み入れた途端、「何しに来たの?」「どこから来たの?」「なんで来たの?」と根ほり葉ほり聞かれてしまうようなことが教会では起こりがち。この辺りをゆるく変えられたら、日本の教会や伝道のあり方も変わるのではないでしょうか。

横坂 百貨店って、冷やかしでもふらっと入れるじゃないですか。「最近はこんな物が売っているのね」「これなら買ってみようかな」などと考える余地もある。「絶対買わなきゃ帰さないぞ」という店だったら、誰も入りたくない。教会も同じだと思いますよ。

「『買わなきゃ帰さない』というお店には誰も入りたくない」と横坂さん

松谷 教会がツィッターをやりたがらない理由の一つに、「炎上が怖い」ということがあるようです。特に渡辺さんに聞きたいのですが、炎上しないように「ここまではやるけど、ここからはやらない」というような基準のラインはあるのですか?

渡辺 みんなが分からないギャグをやらないとか……(笑)。とてもコアなネタをやると、炎上しやすいかもしれません。あとは、聖書をいじることはあっても、特定の誰かをいじったりはしないことですね。

阿部 立教大学に入って初めてキリスト教に触れ、まだ大枠も知らないのに、いきなりガンガン専門用語とかを言われても分からない部分はあります。1年生の時に、上馬さんの本『世界一ゆるい聖書入門』があったらよかったのに……と本当に思います。

「1年の時に『世界一ゆるい聖書入門』を読めていたら…」と語る阿部さん

西原 「教会に若い人が来ても、ほとんど定着しません。どうしたらよいでしょう?」という質問が来ています。

横坂 まずは数を打つことですよね。いろいろな方法で。それから、教会が居心地のよい場所になっているかを考えることでしょうか。「また来てください」というのはNGワードです。

渡辺 また来るかどうかは、来てくださった方と神様との関係ですから。

西原 新来会者として来る年齢層というのはどれくらいなのですか?

横坂 20代が一番多くて、次に30代、10代と続きます。

「二世」の痛みに寄り添いたい

渡辺 僕個人としては、ノンクリスチャンへ向けて発信しているということもあるのですが、もう一つ、「クリスチャン二世の心の痛みに寄り添いたい」という思いもあります。僕も牧師の息子として育って、教会があるのが普通でした。「地球が丸い」とみんな普通に知っているのと同じように、神様を信じていました。でも、小中学校の時に「僕、教会に行ってるんだ」と言うと、「えっ?」と驚かれる。これって、結構きついんですよ。でも、僕らが面白いことをツィートして、ノンクリスチャンから逆に「二世」にリツイートで回ってくるという流れは、とてもいいと思うんですよ。

松谷 上馬キリスト教会を初めて取材した時、渡辺さんからその話を聞いてとても感銘を受けました。わたしもクリスチャン二世でしたが、教会ではふざけちゃいけない、騒いじゃいけない、面白がってはいけないと幼いころから叩き込まれてきたように思います。でも、上馬のツィッターを見て、しかも中の人がクリスチャン二世だと知って、どこか窮屈さに違和感を覚えていた自分は間違っていなかったんだと慰められました。

渡辺 今回、本を出版することでやっとオフラインに出られたと感じています。ここから、また別のことを仕掛けていこうと考えていますが、まずは本を読んでいただきたいですね。今の目標は、「ドラクエ」と「マツコの知らない世界」に出ることです(笑)。

西原 貴重なお話をありがとうございました。

〝ラクして福音〟~SNS時代のツイッター宣教論 上馬キリスト教会「中の人」に聞く リスペクトしているからこそ 2016年12月25日

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