靖国神社への閣僚らの参拝に抗議 「信仰の自由の侵害」と同盟教団他 2021年8月27日

 菅義偉首相が8月15日に靖国神社に玉串料を奉納し、13日と15日に閣僚らが靖国神社を参拝したことに対して、日本同盟基督教団「教会と国家」委員会(本間羊一委員長)は27日、抗議声明を発表した。

 声明では、軍国主義の精神的支柱となった国家神道の中心的施設である靖国神社に、閣僚などの政治指導者がその肩書を記載しつつ参拝することは、私人としての宗教的行為とは異なり、公的な宗教的行為であり、「靖国神社を公人として援助・助長していると言わざるを得えません」と主張。憲法第20条3項に違反し、憲法第99条の憲法尊重擁護義務を無視した行動だと訴えた。また、憲法第20条1項にも違反しているとし、「それは、戦前戦中の轍を踏み、国家による宗教上の強要を生む可能性を孕んでおり、私たちの信仰の自由への侵害であると言わざるを得ません」と強調。「再びかつての軍国主義を招来しかねない」という理由から、自民党の改憲に向けた取り組み強化を懸念した。

 他にも、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会(星出卓也委員長)、日本キリスト教会東京中会ヤスクニ・社会問題委員会(篠塚予奈委員長)、政教分離の侵害を監視する全国会議(古賀正義、木村庸五代表幹事)、靖国神社国営化阻止キリスト者グループ(浦瀬佑司委員長)などが相次いで声明を発表し、抗議の意思を示した。

 声明の全文は以下の通り。


菅首相の靖国神社への玉串料奉納、及び閣僚の参拝に対する抗議声明

 私ども日本同盟基督教団「教会と国家」委員会は、菅義偉首相が2021年8月15日に靖国神社に玉串料を奉納し、また13日と15日に閣僚らが靖国神社を参拝したことに対して、以下の理由で強く抗議いたします。

1.抗議の対象とする事実

 菅首相は、2021年8月15日、靖国神社に代理人を通じて玉串料を奉納しました。また、8月13日には岸信夫防衛相、西村康稔経済再生担当相が、8月15日には小泉進次郎環境相、萩生田光一文科相、井上信治万博相が靖国神社を参拝し、昨年の4閣僚を上回る5閣僚が参拝をしました。首相の玉串料奉納は第二次安倍政権発足以来9年連続、8月15日の閣僚の靖国参拝は2年連続です。

 菅首相による15日の全国戦没者追悼式の式辞は、昨年の安倍前首相のものと概ね変わらない内容でした。本来ならば、アジアの近隣諸国に対する加害責任の自覚から「深い反省」や「哀悼の意」を表明すべきところを、それらの言葉は皆無でした。また、萩生田氏は「自国のために尊い犠牲となられた先人に、尊崇の念を持ってお参りするのは自然な姿だ」と発言しましたが、軍国主義の精神的支柱となった国家神道の中心的施設である靖国神社に、閣僚などの政治指導者がその肩書を記載しつつ参拝することは、私人としての宗教的行為とは異なる意味を持ちます。菅内閣は今年6月25日に「植民地支配と侵略への反省とおわび」を明記した「村山談話」(1995年)を継承しているとの答弁書を閣議決定しています。しかし、菅首相をはじめとした諸閣僚のこれらの言動は、菅政権を含めて歴代内閣が受け継いでいるはずの「村山談話」に表明されている歴史認識を無視した不誠実なものと言わざるを得ません。

2.政教分離原則に違反すること

 かつて日本は、神格化された天皇を頂点として、皇室神道の下に神社神道を再編し、国教としての国家神道を形成しました。政府は国民に対し教育勅語や神社参拝等を通して国家神道及び天皇への礼拝を強要しました。神社参拝は国民、及び日本が植民地とした国々の人々に対しても義務とされました。拒否すれば不敬とみなされ、社会からの排除を始め、逮捕、投獄の末、獄死させられる者もいました。こうして植民地・支配地においても強制的し、根強く浸透した国家神道は、国家総動員の戦争を支える精神的支柱となり、日本は軍国主義へ突き進み、アジア地域の侵略とそこに住む人々への神社参拝強要がなされる中、国内外の多くの尊い命が犠牲となりました。日本が過去に犯したこのような過ちを繰り返さぬよう、日本国憲法第20条は、国家が宗教行為をすることや、特定の宗教団体に特権を与えることを禁じた政教分離を定めています。

 今回の5閣僚の参拝はもちろん、肩書に「自民党総裁」と記帳がなされた菅首相の靖国神社への玉串料奉納も、いずれも私人としての宗教行為とは到底理解できない公的な宗教的行為為とは到底理解できない公的な宗教的行為です。これらはす。これらは国の国の宗教活動宗教活動にあたり、靖国神社を公人として援助・助長していると言わざるを得ません。とりわけ、文部科学省は宗務とりわけ、文部科学省は宗務行政を担当し、戦後における「信教の自由」の確立や政教分離の徹底を推進す行政を担当し、戦後における「信教の自由」の確立や政教分離の徹底を推進すべき行政機関べき行政機関ででももあることをあることを踏まえる時、萩生田踏まえる時、萩生田氏氏のの参拝と発言参拝と発言はは文科相文科相としてとしての適性を著しく欠くの適性を著しく欠くものですものです。

 結果として、これらの行為は靖国神社という特定の宗教に特権を与えています。したがって、本抗議声明の1に記載の事実は、「国及びその機関は、宗教教育その他のいかなる宗教的活動もしてはならない」という憲法第20条3項に明確に違反しており、憲法第99条の憲法尊重擁護義務を無視した行動と言わざるを得ません。

3.私たちの信仰の自由を侵害していること

 キリスト者である私たちは、父・子・聖霊の三位一体なる神が、今もこの世界を支配し治めているという信仰に立っています。この世の権力は全てこの神に由来し、この神を超えることはありません。私たちは、この神のみを礼拝します。

 かつて戦前戦中、キリスト教がキリスト教が弾圧されたのは、国家が人間に過ぎない天皇を神とし、子なる神である主イエス・キリストを天皇と対立すると見たからでした。そして当時、私たちは国家が推進した天皇への礼拝に屈服し、主イエス・キリストと並べて天皇や神社を拝むという偶像礼拝の罪を犯したのです。

 現在、私たち日本同盟基督教団は、戦後50年を経過する頃より、公式の宣言文などにおいて、その罪を認め、悔い改めを表明しています(1991年「日本同盟基督教団宣教100周年記念宣言」、1996年「日本同盟基督教団宣教105周年記念大会 横浜宣言」等)。

 本来、「信教の自由」をはじめとする基本的人権は人間の尊厳に関わるものであり、絶対に侵されるべきではありません。しかし、国の機関である首相や国民の代表である多くの国会議員が一宗教団体に過ぎない靖国神社を参拝することは、特定の宗教団体に国が特権を与えることであり、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」という憲法第20条1項に違反します。それは、戦前戦中の轍を踏み、国家による宗教上の強要を生む可能性を孕んでおり、私たちの信仰の自由への侵害であると言わざるを得ません。

4.軍国主義が復活するおそれがあること

 靖国神社の目的は、国家のために死んだとされる戦死者の「慰霊と顕彰」にありますから、首相は、靖国神社に合祀されているA級戦犯を含む戦死者を「慰霊」「顕彰」するのと同様の行為を行ったのです。また、現役の防衛相である岸信夫氏の靖国参拝は、2016年12月29日に稲田朋美氏が初めて参拝して以来のことでした。岸防衛相の参拝を受けて、韓国外交省は13日、熊谷直樹総括公使を呼び出し、「慨嘆を禁じ得ない。両国間の信頼関係を毀損する」として厳重に抗議したことからも、岸氏の言動は防衛相としての適性を著しく欠くものと言わざるを得ません。

 現在、菅首相を党首とする自民党は、自衛隊を憲法に明記することをはじめとした憲法改正への取り組みを強化しています。その自衛隊とは2016年年3月29日に施行されたいわゆる平和安全法制によって、集団的自衛権の行使が容認されている自衛隊に他なりません。それは、自衛隊が海外で集団的自衛権と称する武力行使をし、軍隊として戦争に参加することです。仮に自衛隊員が戦死した時には日本政府が靖国神社に祀るという道を開きかねず、再びかつての軍国主義を招来しかねないということなのです。

 以上の理由から、今回の8月15日の首相の玉串料奉納、また、13日と15日の閣僚らによる靖国神社参拝に対し、強く抗議いたします。

日本同盟基督教団「教会と国家」委員会
委員長 本間羊一


首相の靖国神社玉串料奉納、5閣僚の靖国神社参拝に抗議します

 私たち日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は、政教分離原則の順守を求め、首相や閣僚らが靖国神社に参拝及び玉串料や真榊等を奉納することに対して、一貫して抗議を続けています。先日の8月2日にも、敗戦記念日に玉串料の奉納及び参拝を行わないよう要請をしたばかりでした。それにもかかわらず、今年の8月15日に首相は玉串料を奉納し、8月13日には西村康稔経済再生担当大臣、岸信夫防衛大臣、8月15日には萩生田光一文部科学大臣、小泉進次郎環境大臣、井上信治国際博覧会担当大臣の合計 5閣僚が同神社の参拝を行いました。

 首相の靖国神社への玉串料奉納は「自民党総裁」の名で、つまり公的な立場で行うものであることを表明して行われたものであり、5閣僚の同神社の参拝も「文部科学大臣」または「国会議員」としての公の立場で記帳がなされており、公的な立場での参拝であることを表明して行ったものです。これらの行為は、日本国憲法第20条3項の政教分離原則に違反し、憲法第99条の憲法尊重擁護義務を侵害する行為というほかありません。

 靖国神社は、戦前・戦中の国家神道体制下において軍国主義の精神的支柱、国民の思想統制の道具となり、その結果、300万人を越える国民、2000万人ものアジア諸国の人々のいのちを奪う悲惨な結末をもたらしました。この歴史の反省に基づいて政教分離原則は定められています。首相及び閣僚が同神社への参拝等を行うことは、政教分離原則及び憲法尊重擁護義務に違反する違法行為であるとともに、アジア・太平洋大戦にて国内外に甚大な被害をもたらしたことに対する歴史的反省を欠くものであります。

 首相及び閣僚が、戦後76年の年に、国策を誤り侵略加害の罪責を犯した歴史の反省に立たず、日本国憲法尊重擁護義務をないがしろにし、政教分離原則を侵害したことに対し、厳重に抗議します。

2021年8月27日
日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会
委員長 星出卓也


首相・閣僚の靖国神社への参拝・玉串料奉納に抗議します

 わたしたち日本キリスト教会東京中会ヤスクニ・社会問題委員会は8月12日に首相、閣僚が8月15日に向けて靖国神社への参拝、真榊奉納をしないように要請を致しました。

 それにもかかわらず貴職らが、8月13日、15日に靖国神社への参拝、玉串科奉納を行ったことにわたしたちは抗議します。これらの行為は、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めている憲法第20条3項の規定に明確に違反する行為です。憲法の定める政教分離原則を厳格に遵守することを求めます。今後貴職らは、靖国神社への参拝、玉串料奉納、真榊奉納をしないでください。

2021年8月20日
日本キリスト教会東京中会ヤスクニ・社会問題委員会
委員長 篠塚予奈


首相の靖国神社玉串料奉納、閣僚の靖国神社参拝に抗議します

 私たち「政教分離の侵害を監視する全国会議」は、首相や閣僚らが靖国神社に参拝及び玉串料や真榊等を奉納することに対して、そのつど抗議を続けています。先日の8月12日にも敗戦記念日に玉串料の奉納及び参拝を行わないよう要請をしたばかりでした。それにもかかわらず今年の8月15日に、首相は玉串料を奉納し、8月13日には経済再生担当相、防衛相、8月15日には文部科学相、環境相、万博相の合計5閣僚が同神社の参拝を行いました。

 首相の靖国神社への玉串料奉納は「自民党総裁」の名で、つまり公的な立場で行うものであることを表明して行われたものであり、5閣僚の同神社の参拝も国務大臣または議員としての公の立場で記帳がなされており、公的な立場での参拝であることを表明して行ったものです。これらの行為は、日本国憲法20条3項の政教分離原則に違反し、憲法99条の憲法尊重擁護義務を無視した行動というほかありません。

 靖国神社は戦前・戦中の国家神道体制下において軍国主義の精神的支柱、国民の思想統制の道具となり、その結果、2000万人ものアジア諸国の人々のいのちを奪う悲惨な結末をもたらしました。この歴史の反省に基づいて政教分離原則は定められています。首相及び閣僚が同神社への公的参拝等を行うことは、政教分離原則及び憲法尊重擁護義務に違反する違法行為であるとともに、アジア・太平洋大戦にて国内外に甚大な被害をもたらしたことに対する歴史的認識を欠くものであります。

 首相及び閣僚が、戦後76年の年に、侵略加害の歴史の反省に立たず、日本国憲法尊重擁護義務をないがしろにし、政教分離原則を侵害したことに対し、厳重に抗議します。

2021年8月20日
政教分離の侵害を監視する全国会議
代表幹事 古賀正義、木村庸五
事務局長 星出卓也


敗戦記念日における、首相および政府機関の靖国神社参拝、供物奉納に対し、強く抗議する。

 先に私たち靖国神社国営化阻止キリスト者グループは、前に首相及び政府機関が靖国神社に参拝・供物奉納をしないよう要請文を送付した。しかし、今年もまた、5閣僚が敗戦記念日を前後して靖国神社に参拝した。また、菅内閣総理大臣は、私費ではあるが玉ぐし料を奉納した。同日、敗戦後75年にあたり日本武道館で実施された政府主催の全国戦没者追悼式で、菅首相は、歴代首相が言及した「アジア諸国に与えた損害と苦痛」、「深い反省」にはふれなかった。

 今、日韓関係は信頼と友好の関係から大きく後退し、不信と非難の応酬の状態に陥っている。これは、とくに「慰安婦問題」と「徴用工問題」の解決に向けての取り組みの問題が発端であり、戦後清算の問題であり、歴代自由民主党・公明党両党による政権の歴史認識に起因している。戦前においては、靖国神社は戦没者慰霊の施設であるだけでなく、日本の植民地支配と侵略戦争を遂行するため、国民を戦争に動員する国営の神社であった。そして、戦後の民主化改革によりその在り方が根本的に変わったにもかかわらず、いまもなお、かつての植民地支配と侵略戦争を正当化する拠点としての役割を担っている。前安倍政権のめざす「戦後レジームからの脱却」は、明らかに民主化改革と戦後清算を否定するものであり、アジア諸国が決して受け入れることのできない主張である。そして、日本国憲法の3原則を変えてはならないという思いは大多数の日本の市民の願いである。それにも拘わらず、菅内閣は、その事実を何ら顧慮することなく、安易に前例を踏襲する姿勢を続けている。このことは、大きな過ちであり、将来に向かって、日本及び東アジア圏における民主主義、平和主義の歩みに、強く禍根を残すものと言わざるを得ない。日本国憲法の基本原理である、国民主権、基本的人権の保障、平和主義を政府機関は厳守する事が、憲法第99条において義務づけられていることを無視してはならない。

 政府機関による靖国神社参拝、供物奉納は日本国憲法に明らかに違反するものである。歴史に謙虚に向き合い、教訓を学び、誤りを正すべきである。

 以上の理由により、この度の安倍首相の靖国神社への供物奉納、政府機関の靖国神社参拝に強く抗議する。

2021年8月18日
靖国神社国営化阻止キリスト者グループ
委員長 浦瀬佑司

新宗連、NCC、政教分離の侵害を監視する全国会議など 首相・閣僚らによる靖国神社参拝を憂慮 2021年8月15日

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