【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 牧師に求められるのはどんな能力や技術? 上林順一郎

Q.牧師も最低限の法律や簿記・会計、労務管理などに精通している必要があると思いますが、いかがでしょうか。(50代・男性)

 もし、「カネ勘定や人使いのウマイ牧師」と「ヘタな牧師」がいるとして、私は躊躇することなく「ウマイ牧師」に軍配を挙げます。教会も一つの組織であり、集団です。そこには人が集まり、活動が行われ、そしてお金も動きます。

 当然、組織を運営し、集団を管理し、財政を維持することが大切な課題となります。そのために役員会がありますが、最終的には牧師がその責任を負わなければなりません。したがって、牧師も基礎的な法律知識を持ち、管理や会議運営などの能力があり、会計や財政状況を把握できることは大切なことです。財務表を読めたり、バランスシートを作ったり、マネージメントの能力を磨いたりできれば、もっとよいことかもしれません。そうなれば、「教会の常識は世間の非常識」と、批判されることも少なくなるでしょう。

 だからと言って、いまベストセラーの『もし、ドラ』(「もし、高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネージメント』を読んだら」ダイヤモンド社)ばりに、ドラッカーの本を何冊か読んで人事管理や資産運用の専門家になったとしても、教会員はそのことをもって牧師を尊敬することは多分ないでしょう。

 牧師という職業は、確かに広い範囲に及ぶ様々の高度な能力や技術が要求されます。しかし、その管理能力とは、例えば礼拝堂の戸締りや雨漏りへの心配であったり、経営能力とは、例えば予算の達成や献金の将来への気遣いであったり、人事管理とは、例えば病床訪問や電話での受け答えであったり、世間的な常識とは、例えばご近所との友好的な付き合いであったり、こうした「フツウのこと」としてまずあるのではないでしょうか?

 もし、「会計や管理に精通している牧師」と「フツウの牧師」がいるとして、私は躊躇することなく「フツウの牧師」に軍配を挙げます。しかし、この「フツウのこと」ができない牧師が増えていると感じるのは、余計な心配でしょうか。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

 かんばやし・じゅんいちろう 1940年、大阪生まれ。同志社大学神学部卒業。日本基督教団早稲田教会、浪花教会、吾妻教会、松山教会、江古田教会の牧師を歴任。著書に『なろうとして、なれない時』(現代社会思想社)、『引き算で生きてみませんか』(YMCA出版)、『人生いつも迷い道』(コイノニア社)、『なみだ流したその後で』(キリスト新聞社)、共著に『心に残るE話』(日本キリスト教団出版局)、『教会では聞けない「21世紀」信仰問答』(キリスト新聞社)など。

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