【検証 〝協会〟の実相と教会の課題】 過ちを繰り返さないために 教会自身の課題として 編集部 2022年10月21日

 本紙では安倍晋三元首相の銃撃事件後に明らかになった旧・統一協会(世界平和統一家庭連合)をめぐる諸問題について、9月1日付の紙面から連続5回、計6人の方々にさまざまな立場から寄稿していただいた。かつて『キリスト教年鑑』に関連教会の情報を記載していた負の歴史もふまえ、改めて私たちに問われた課題を振り返る。

 日本のカトリック司教団が、統一協会は「キリスト教ではなく、エキュメニズムの対象でもない」と公に表明したのが1985年。当時の本紙報道では、声明への抗議とともに「教義への誤解がある」「争うことは本意ではない」などと撤回要求を迫る統一協会側の見解も紹介されている。「キリスト教会である」と称している法人を、可能な限り調査収集して記載し、情報源として提供するという編集方針を掲げた『キリスト教年鑑』も、次いで日本キリスト教協議会(NCC)、日本福音連盟などの団体、教会からの公式見解などを受けて、ようやく1989年から統一協会の掲載を取り止めた。

 すでに救出活動に取り組んでいた牧師たちの手記が、90年代にかけて本紙にもたびたび掲載されている。「エクレシア会」代表の和賀真也さん(セブンスデー・アドベンチスト教会牧師)は、「統一協会から脱会するということだけでは解決にならない」と話す(1993年7月3日付)。「問題は脱会後、……改めて真理とは何かということをもう一度探求し、本人が確かな真理に出会うという体験にまで導く、そこまでをして救出と考えています」

 1968年に結成された「国際勝共連合」は、統一協会の別働隊として「反共産主義」を掲げて岸信介元首相ら右派政治家に接近した。日本共産党宗教委員会責任者の土井洋彦(うみひこ)さん=写真下=は、特に70年代の京都府知事選での「貢献」が評価されたと指摘する。その後も、同党が躍進するたびに同団体の機関紙「思想新聞」などによる反共攻撃を扇動してきたという。2009年の総選挙で自民党が下野すると、組織票と運動員を確保する統一協会への依存度が増していき、12年に第二次安倍政権が発足すると、その関係がいよいよ強化され、「悲願」だった名称変更にまで至る。

 今年9月、参議院議員会館で行われたシンポジウム(全国革新懇主催)では、元文部科学事務次官の前川喜平さんが、その詳しい経緯について証言した。文化庁宗務課長だった1997年当時、「実態に変化がない団体の変更申請は認証できない」と伝え、その後も同じ姿勢を貫いた。95年のオウム真理教事件を受け、宗教法人の安易な認証をしないという合意が背景にあった。しかし、2015年に前例が覆される。役職上、前川さんの上役には事務次官と文科大臣しかいないことから、「何らかの政治的圧力があったとしか考えられない」と振り返る。

 同じ席上、長年、新興宗教を含む宗教と政治の関わりを取材してきたジャーナリストの柿田睦夫さんは、統一協会は特異な教義を有する「宗教団体である」ことを強調した上で、その詐欺的勧誘、霊感商法、高額献金、合同(集団)結婚式などの問題性が、すでに数々の民事訴訟で不法行為として確定していると指摘。さらに、他の新興宗教にも共通する元信者らの「スタッフが優しく話を聞いてくれた」という声を紹介し、「私たちの社会に最も欠けている点ではないか」と訴えた。

 本連載でも繰り返し指摘されてきたように、「線引きをすることが問題の完全解決ではない。……救いを求めた結果、カルト集団に誘惑されてしまった『線の外側』にいる人々を私たちキリスト者は覚えたい」(卓 志雄)。さらに、「教義的には正統に属する教会であっても信徒の虐待や財産の収奪をしているカルト化した教会が多数」(豊田通信)ある。厳しい献金のノルマや、恋愛・結婚の制約などは、教会でもよく耳にする。

【検証 〝協会〟の実相と教会の課題】 カルト教団に命奪われた父 日本聖公会管区事務所宣教主事・司祭 卓 志雄さん 2022年9月11日

 自身も宗教2世として苦しんだ体験から、同じ2世らの証言を漫画化した菊地真理子さんは、新刊『「神様」のいる家で育ちました』の「終わりに」でこう記す。「この話をもってして、この宗教はこうであると断言する意図はありません。まして、親や信者を断罪するつもりもありません。むしろ彼らを周縁化することには、危惧の念を抱いています。信仰を持つ人たちのことを、理解できないおかしな人たちと追いやってしまうことは、まさに今までの社会がそうであったように、問題をより深刻にすることにしかなりません」

 統一協会は名前を変えた今も、「単立・キリスト教」の宗教法人として『宗教年鑑』に掲載され続けている。「空白の30年」を経て、なお他人事では済まされない。同じ過ちを繰り返さないために、私たちにできることとは――。(本紙・松谷信司)

【検証 〝協会〟の実相と教会の課題】 拒絶ではなく救いと慰めを 日本基督教団カルト問題連絡会世話人 豊田通信さん 2022年10月11日

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