【書評】 『ともに生きる仏教――お寺の社会活動最前線』 大谷栄一 編

 「ともに生きる」「地域に開く」「社会的課題と向き合う」――これらはいずれも、いま教会を語る上で欠かせないキーワードになっている。同時にそれは、同じ宗教施設としてのお寺も共有している問題意識である。

 近代仏教研究を専門とする著者がコーディネーターとなり、佛教大学四条センターで開催した全6回の公開講座「現代社会と向き合う仏教」を書籍化した。

 2000年代以降、仏教界では新しい世代による「仏教の社会活動・文化活動」の波が訪れているという。子育て支援、被災地支援、演劇活動、NPOとの協働、貧困対策、グリーフケア、ビハーラ(仏教版ホスピス)など、多種多様な「社会活動」の実践を取り上げ、当事者による報告と研究者による分析が加わる。

 おそらく本紙史上初となった仏教者の連載執筆陣である池口龍法氏(龍岸寺住職)も登場し、評価がはっきり二分したという浄土系アイドル「てら*ぱるむす」の育成に携わる経緯とその意図を明かす。

 「『お寺を開く』時に、宗教色を薄くして、どんな信仰の人も来やすいようにするケースが多い。しかし、宗教色を薄くしたら、宗教の魅力なんて伝わるはずがない」「私は、お寺に来る人に対して、手の合わせ方を教えたりはするけれども、例えばライブイベントで会場提供する場合に、法話や法要などをセットにするよう希望したりはしない。いまどきお寺の本堂で時間を過ごすこと自体がレアなのだから、わざわざ私が法話や法要などをしなくとも、足を運んでくれるだけで相当な宗教体験だと思うからである」

 私たちの教会もそろそろ、「伝道か、社会活動か」などという二者択一的な時代遅れの議論は卒業しなければならない。他宗教者から学ぶべきことは多い。

【宗教リテラシー向上委員会】 ハードル下げつつ重厚な宗教の現場にも 池口龍法 2018年4月21日

【本体820円+税】
【筑摩書房】978-4480072146

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