〝人間が大切にされる社会を〟 東京・世田谷地区でキリスト教一致祈祷会 2015年2月7日

 1月18~25日は、カトリック教会と世界教会協議会(WCC)が主催する「キリスト教一致祈祷週間」。今年は「イエスは『水を飲ませてください』と言われた」(ヨハネ4・7)をテーマに、ブラジル・キリスト教会全国協議会(CONIC)が準備を行った。教皇庁キリスト教一致推進評議会とWCCが共同発行した資料に基づいて、日本では、日本キリスト教協議会(NCC)とカトリック中央協議会が日本語版の小冊子を作成。それをもとに、全国各地でエキュメニカルな集会が行われた。

 東京の世田谷地区では、6教派18教会と恵泉女学園が共催する「世田谷地区キリスト教一致祈祷会」が18日、日本福音キリスト教会連合宣教教会(世田谷区祖師谷)で行われた。各教会から信徒や教職など約220人が参加した=写真右。

 同地区では2011年から隔年で一致祈祷会を開催しており、今回が3回目となる。日本語版小冊子をもとに同地区独自の式文を作成し、オリジナルの式文に収録されているブラジルの賛美歌2曲(「水」「アレルヤ」)を採り入れた。

 「アレルヤ」は、実行委員代表の松本敏之氏(日基教団経堂緑岡教会牧師)が日本語に翻訳したもので、公の場で歌われるのは今回が初。同氏は牧師として7年間ブラジルに赴任していた経験があり、「ブラジルのことを心に留めて、日本における教派を超えた交わりが行われることを嬉しく思う」とあいさつした。

 「水を飲ませてください」と題して説教したムケンゲシャイ・マタタ氏(オリエンス宗教研究所所長、淳心会司祭=写真左)は、「キリスト者であり、人間であるわたしたちが今、多様な価値観を持っている人たちと関わりながら、自らの私生活の中で神を見出す存在となるよう努力が求められている。そのためにわれわれはここに集まっている」と強調。

 さらに、「平和を創るために国と国との違いを超えて、人と人との関わりの中で神の姿を見出せるような生き方も重要」として、「アジアにおけるキリスト者の共同体が民族や文化の摩擦を超えて、仏教を始め、神道、ヒンドゥー教、イスラム教といった他の宗教との関わりを深めていくことは大切」と訴えた。

 最後に、「福音宣教にたずさわるわたしたちが、キリスト者同士を大切にし合う、あるいは内向きな感覚で共同体を大切にするのではなく、イエスのように国、宗教、性別、文化の壁を破り、人間が大切にされるための社会を築いていくことが求められている」と述べた。

 献金は、カリタスジャパン・国際カリタスの反貧困キャンペーン「ウガンダ・ケニアでの飢餓対策プロジェクト」および、岩手県で被災地支援と宣教の働きを行っている「一般社団法人いっぽいっぽ岩手」のためにささげられた。

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 前述の小冊子では、近年ブラジルで「キリスト教に由来する宗教上の不寛容さ」が表面化していることが問題にされている。同冊子によると、その根底には〝宗教市場〟の競争があり、キリスト教のいくつかの教派が、互いに対して競争的な態度をとるようになっている。こうした市場主義的なキリスト教会は、政党政治に投資をしたり、特定の利害団体と手を結ぶなどしており、伝統的な教派の中には、「キリスト教教会を目に見える形で一致させようとする活動から距離を置くという傾向」が見られるという。

 また同冊子には、2010年の国勢調査の結果、86・8%のブラジル国民が自らをキリスト教徒であるとしているが、「キリスト教との結びつきの強さが、非暴力を求める態度や人間の尊厳への敬意に反映されているようには見えません」として、暴力の比率が高いことが指摘されている。2000~2010年の間に4万3千700人の女性が殺され、03~11年に500人の先住民が殺されているという。

 同冊子は、「さまざまな形で行われる不寛容を克服するためには、積極的な対処が求められます。その際には、正当な多様性を尊重し、和解と平和への不変の道としての対話を、福音のもとに促進しなければなりません」と呼び掛けている。

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