オンライン座談会「教会の情報発信はどう変わるか」 鈴木聖仕(Facebookグループページ管理者)×中村恵久(「対策サイト」開設)×吉岡恵生(YouTubeで配信) 2020年6月1日

 新型コロナウイルスが教会にもたらした甚大な影響に即応し、それぞれの現場でいち早く対策に乗り出した3人の体験から振り返りつつ、コロナ禍における教会と礼拝がどのような課題と可能性を持っているかをオンラインで語り合った。

■鈴木聖仕(松原湖バイブルキャンプ主事) すずき・きよし 1979年神奈川県生まれ。東京基督教大学卒業。2006年より日本同盟基督教団教師。JS青年ミニストリー、町田南キリスト教会牧師を経て、2016年より現職。Facebookグループ「教会⛪️動画配信のための情報交換」(https://bit.ly/3gGr7N1)管理者=写真右下

■中村恵久(CALM代表) なかむら・よしひさ 1990年兵庫県生まれ。テレビディレクターとして仙台市の放送局でバラエティ番組、報道番組を手がけた後、25歳で独立。2019年6月にIT系クリスチャンのためのネットワーク「CALM」(https://bit.ly/2WZPYUl)をスタート。有志で「クリスチャン向けコロナウイルス対策サイト」(https://covid19jc.com/)を立ち上げた=写真左上

■吉岡恵生(日本基督教団高槻日吉台教会牧師) よしおか・やすたか 1985年神奈川県生まれ。同志社大学神学部卒業、同大学院神学研究科博士課程(前期課程)修了。日本基督教団霊南坂教会伝道師、同教会牧師を経て渡米。米国キリスト合同教会シカモア組合教会日語部牧師として在任中からYouTube(https://bit.ly/2LX2Nbw)で発信を始める。帰国後は自力で礼拝のオンライン化に尽力=写真左下

オンライン礼拝に挑む牧師たちの声

――中村さんはこの間、さまざまな牧師とやりとりがあったかと思いますが……。

中村 僕は宮城県に住んでいたのですが、東日本大震災が起こった当時、有象無象の情報サイトが立ち上がって、何を見たらどの情報が載っているのかが全然分からず、求めている情報にアクセスできるサイトがありませんでした。そこで、ある程度更新されつつ情報の質が担保され、一目で分かりやすいものがあればいいなと願っていました。「クリスチャン向け対策サイト」も、本当は横文字を使ってオシャレにしたかったんですが、牧師や配信をしたいであろう担当者の平均年齢を考えて、45歳以上を想定し、デザインは色やフォントなどを東京都のページを参考に、なるべく安心感を与えるようなものにしました。ただ配信機材の話になると、どうしても横文字が必要になってくるので、それは今も課題です。

 開設直後は毎日3、4人から連絡や問い合わせが来て、基本的な質問からZoomの使い方に至るまで、対応に迫られました。基本的には全部書いてある情報を読めば分かるはずなんですが……(笑)。動画配信の情報交換がある程度落ち着いてからは、献金に関する情報の需要が高まったようです。

――他方、鈴木さんが管理されているFacebookグループ(5月末時点で約1700人が参加)は、管理上どんなことを心掛けましたか?

鈴木 そうですね。あくまで配信の方法やそれにまつわる情報交換に徹するという方針で、礼拝論や神学論のような内容は控えていただくように呼び掛け、トピックごとにある程度整理するようにしました。そのスタンスは崩さないように気をつけています。それでも、いろんな無理難題を言ってくる先生とか、空気の読めない投稿とかありますが、それはもう仕方がない。初心者のためのトピックを立ち上げたんですが、最初から縛りを設け過ぎたせいか、うまく軌道に乗らなかった点は失敗でした。あえて質問形式にして、疑問に答えるようにしたんですが、そもそも何から質問すればいいのかすら分からない人たちも少なくないわけで。一方で、「自由に情報を載せてください」となると、まったく初心者向きではない情報がどんどん寄せられて、分からない人には開きたくもないページになってしまう……。

――やはり配信担当者は牧師が多いのでしょうか?

鈴木 教会の公式アカウントからのアクセスもかなり多いです。牧師から頼まれて参加してきた信徒の方たちももちろんいます。最初の段階で200~300人ほどは、配信にある程度詳しい人を招待してスタートさせました。ちょうど同じ時期に、Facebookで「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」(https://bit.ly/36pPt9f)が立ち上がったんです。そのページがとても分かりやすかったので、そこの情報と教会動画配信の情報をリンクさせました。

 僕自身、動画配信に関しては知識や実績があるわけではなく、1カ月前から調べ始めたという程度なんです。入ってくる情報を追いながら、それらの知識をつないでいるという感じですね。

――説教を語る側として、オンラインで礼拝を始めてから気付いたことはありますか?

吉岡 ありますね。オンライン礼拝に可能性を感じているのは確かですが、それは最悪の状況下における最善の選択肢であって、やはり最も理想的な状態とは思えないんです。説教を語る立場で言うなら、反応がないというのは本当に話しにくい。大学の先生たちも同じ悩みがあるそうですが、学生たちが眠そうだとか、退屈そうだという反応が分かれば、話を変えたりアレンジしたりという工夫ができるのに、それがまったくできません。例えば説教中に笑いを取りにいくこともあるわけですが、笑ってくれる人がいないんですよ(笑)。本来なら会衆が笑っている間に、間を整えたりするんですが、もう自分で笑うしかない。

 それから、賛美の声も牧師のソロ。歌はそんなにうまくないので、こんな歌声が世界中に配信されているかと思うと(笑)。技術よりも信仰だと思っているので、せめて大きな声で歌うよう努力はしているんです。この辺りが悩みですね。

――中村さんの「対策サイト」では、「インターネット礼拝で捧げる生きた礼拝とは?」をテーマに松田牧人牧師(日本バプテスト同盟オアシスチャペル利府キリスト教会)との対談動画を配信されていました。

中村 はい。僕自身はずっとネットの世界に生きてきて、中学生のころから「礼拝も全部ネットでやればいいじゃん」と思っていたクチなのですが、松田先生などから「礼拝とは何なのか」を学んでいくうちに、「自分にとって都合のいいものを取捨選択していく」という姿勢は少し違うのかなと思うようになりました。オンラインの場合、「ザッピング」(チャンネルを頻繁に切り替えながら視聴する行為)もできてしまいますが、参加する側が良い形でコミットしていく必要性があるんだなと思います。礼拝は信徒にとって心地良いだけのものではないですし、接客業で使われる意味での「サービス」とは違う「サービス」なので、その本質を理解しなければいけないと思います。

――リアルで集まってこその教会共同体だという考えが根強い世代にとっては、礼拝を視聴できてしまうことへの危機感があるように思われます。

鈴木 Facebookのグループ上では、「オンライン礼拝の心得」に関する議論も交わされました。パジャマで見ない方がいいとか(笑)。これまで、日本のキリスト教会が、映画を見ることやドラム演奏を礼拝に取り入れることについて違和感を抱いていたころからどんどん変わってきたのと同じように、これからもいろいろなことが変わっていかざるを得ないでしょう。一方で、リアルで集まることの方がしっくり来る人たちがいることも事実ですので、何を大切にして礼拝に与るかは、それぞれがしっかり考えて決めることが大切だと思います。

想定される「コロナ後」の課題
〝何を優先的に選び取るか〟

――今後、オンラインでの礼拝や聖餐式を神学的にどう考えるのか、さらにオンラインについていけない信徒との温度差などが課題として挙げられると思いますが……。

鈴木 日本同盟基督教団が発表した見解が、「オンライン聖餐をしないように」という通達のように受け止められていますが、「完全な状態で聖餐式をすることが難しくなるので、今は控えた方が良い」というニュアンスで、オンラインでの聖餐式が悪だと断罪しているわけではありません。私自身も今の時点の判断としては妥当ではないかと思います。

日本同盟基督教団 オンライン礼拝での「聖礼典」執行に懸念 2020年5月1日

――日本基督教団ではいかがでしょうか?

吉岡 日本基督教団として公式な立場が表明されることはないでしょう。いずれ神学的に問われることになるかもしれませんが、私自身はまだやったことがないので感覚的にはよく分かりません。

――オンラインで礼拝すること自体への抵抗感はどうですか?

吉岡 当初から、むしろやってほしいという要請が強かったこともあり、始めてもう1カ月経ちますが、皆さん感動してくださっています。とにかく福音を伝えるのが一番大切なことですし、そもそも礼拝というのは公のものなので、世の隅々まで宣べ伝えるのが使命であって、今は技術や賜物がある人たちはそれを感謝して存分に生かし、できる限り教会へ行ったことがない人たちにも福音が届く機会にすべきかなと思います。

 ある教会員の家族が、一緒にオンライン礼拝を守っています。ノンクリスチャンのお連れ合いが、いつもは教会に行かないけれども、最近は画面の前に座って、興味深く礼拝を守っていると。また、「オンラインで参加できるなら行かなくてもいいのでは?」と考える人たちが増えるのではないかという心配が当初あったのですが、実際には多くの人がもっと行きたくなっている気がします。テレビで旅番組を見ると、実際にそこへ行きたくなるのと同じように、ライブ配信を通して「これでいいや」と満足するのではなく、「リアルな場でみんなと賛美したい」という気持ちになっています。ノンクリスチャンにとっては、敷居の高かった教会をのぞくきっかけに、教会内の人にとっては、もっと教会に行きたくなるというプラスの効果があったと思います。

 もちろん一方でマイナス面としては、オンラインについて来られない方々をどうフォローするかという点。そのケアは絶対に必要になってきますから、「ライブ配信は分からない」「嫌だ」という方には、礼拝の録音テープや説教原稿をお届けしています。

鈴木 僕も吉岡先生がおっしゃるように、礼拝は外に向かって捧げられるものだという意識があるのですが、あえて動画配信をクローズ(顔と名前を認識できる教会員のみへの限定公開)にしている教会の例もいくつか知っています。ある牧師は自身が影響力を持っていることを良い意味で自覚されており、礼拝をオープンにすることで、他教会の信徒たちが集まってきてしまう事態を懸念されていると聞きました。これからオンライン礼拝に関しては、何を優先的に選び取っていくのかということを各教会で考えていく必要があると思います。

中村 自分が所属する教会の牧師に「牧会されている」という意識を持って、受け取ることが大事だなと改めて思います。説教を聞く側としては、自分が「メッセージ」にとらわれているのか、それとも「教会」にとらわれているのかを吟味する良い機会でもありますね。

――ありがとうございました。(全文は「Ministry」45号に掲載)

「オンライン礼拝」をどう考える? 〝教会のコロナ捕囚〟 芳賀 力(東京神学大学学長) 2020年5月11日

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