【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 公務員も街頭伝道してよい? 大島有紀子

Q.公務員なのですが、街頭で伝道活動をしても職務上問題になりませんか?(40代・女性)

 結論から言いますと、問題ありません。

 公務員は、政治活動については厳しい制限を受けており(国家公務員法102条第1項、地方公務員法36条)違反者には懲役刑を含む罰則が定められていますが、宗教活動については公務員であるからと、これを制限する規定はありません。公務員も一般の人と同様に宗教活動の自由が保障されています。

 このような違いは、信教の自由が自分らしく生きる権利(人権)の実現に不可欠だと考えられていることに基づいています。もっとも、現行の包括的な政治活動の制限については、たとえば休日に職務と関係なく政党のビラを配ったというだけで刑事罰を科すなど、行きすぎだという声もあります。

 他方で、憲法20条3項の政教分離原則により、公の機関は宗教活動を禁じられております。ただし、すべての宗教行為ではなく「目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為」が禁じられているとされています。

 現職の内閣総理大臣が、その職名を記帳して、靖国神社に参拝したことの是非が問われたことはご存じと思います。全国各地で裁判が行われ、わたしも一つの裁判を担当しましたが、裁判例としては、憲法に違反すると明確に判断した勇気ある判決もありますが、総理の個人的な信仰心によるとして職務行為でなく、私的行為として違法でないと言ってのけた判決もあります。総理ですらです。

 ご質問の場合、単なる礼拝出席とは違う積極的な宗教活動ではありますが、仮に質問者が公務員であることを知っている人が通ったとしても、職務として宗教活動をしていると見る人はいません。もとより公務員であることがキリスト教の宣伝になるとは思えません。伝道に寄与するとすれば、職業や地位でなく、信仰者としての生き方であり、それを顕示することは誰にも制限されていないはずです。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

 おおしま・ゆきこ 弁護士。1952年東京生まれ。72年受洗。中央大学法学部卒業。84年に千葉県弁護士会へ登録。渥美雅子法律事務所勤務を経て、89年に大島有紀子法律事務所主宰となり現在に至る。日本基督教団本所緑星教会員。

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