【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 献金額の公表は法的に問題あり? 大島有紀子

Q.個々人の献金額が役員会内で公表されています。法的には問題になりませんか?(50代・教会役員)

 問題の献金は、月定献金のことかと思います。私も会計役員を担当しましたが、個々人の献金額を知るのは会計担当役員のみで、牧師にも知らせません。長年そのように取り扱われてきたようです。

 教会の所属は各自の自由意思によるのですから、そのメンバーの多数によって合意されてきた扱いについては原則として法律の問題は生じません。しかし、個人のプライバシーは憲法によって保障されています。それは、権力による侵害からの保障ですが、私人間、あるいは団体と個人の間でも保障されるべき価値であると認識されており、損害賠償の問題などが生じます。法の出番です。

 献金は、教会経営のために不可欠であり教会員の基本的な義務ですが、金額に強制はありません。そうなると、献金額はさまざまなことを物語る指標になります。つまり高度にプライバシーにかかわることです。これをどの範囲まで保護すべきかが問題になります。

 会計役員は、その処理が適正であることを担保するため、複数で処理するなどこれをチェックする必要があります。しかし、それを役員全員でするというのは必要性の範囲を超えています。そうなると公表の弊害を考えなければなりません。

 ありていに言えば、教会も他の組織と変わりなく、役員や牧師であっても、献金額の多寡によって会員を重んじたり軽んじたりすることはあり得ることです。役員会で献金額が公表されているというだけで、会員をしてそのようなおそれを抱かせ得るでしょう。

 人を献金額で評価しない最も有効な方法は「知らない」ことです。少数でも望まないという意見があれば、公表そのものを考え直す必要があると私は考えます。それが、献金額を知られない権利を人権として保障することの意味です。

 レプタ2枚のやもめをイエスは称えましたが、金持ちは彼女をさげすみました。多くの教会で献金額が秘されているのは、自らを知っているからだと思います。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

 おおしま・ゆきこ 弁護士。1952年東京生まれ。72年受洗。中央大学法学部卒業。84年に千葉県弁護士会へ登録。渥美雅子法律事務所勤務を経て、89年に大島有紀子法律事務所主宰となり現在に至る。日本基督教団本所緑星教会員。

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