【速報】 「国家政権転覆扇動罪」の嫌疑で中国の家庭教会の牧師、逮捕・拘留  2018年12月17日

 中国・四川省成都市の家庭教会(非公認教会)・秋雨之福聖約教会(Early Rain Covenant Church)が12月9日、現地当局により大規模な取り締まりを受け、同教会の王怡(おうい、Wang Yi)牧師(45歳)や信徒100人近くが逮捕・拘束された。すでに釈放された者もいるが、王怡牧師と同牧師の妻・蒋蓉氏=写真、秋雨之福教会の公式フェイスブックより=は「国家政権転覆扇動罪」の嫌疑で現在も拘留が続いており、消息が分かっていない(2018年12月17日現在)。

 その他の複数の同教会関係者が「騒動挑発罪」「違法経営罪」「違法出版罪」などの刑事事件の嫌疑で拘留中であり、また同教会が独自に運営する神学校や人文学院の学生数十人が拘束中と伝えられている。このニュースはSNSを通じて海外にも伝わり、米国務省や国際宗教自由委員会(USCIRF)が懸念表明をしたほか、BBC、CNN、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、サウスチャイナ・モーニング・ポストなどなどが大きく報じている。

 王怡牧師はキリスト者また牧師になる以前は成都大学の憲法学者だったこともあり、同牧師と教会は、中国における「信教の自由」や「政教分離」を求める発言や活動を盛んに行う教会としても知られていた。また家庭教会の中でも、ウェストミンスター信仰基準を採用し、長老制度による改革派教会の形成をけん引する指導者としても活躍していた。

 数的成長が著しい中国のプロテスタント教会だが、2013年に習近平政権になって以降、浙江省の多数の三自教会(公認教会)の十字架が強制撤去された事件に代表されるように、キリスト教に対する政府当局の圧力が強まっている。また2018年2月には宗教事務条例が改訂され、非公認である家庭教会に対する取り締まりを教会するような内容の条文が加えられた。同条例の改訂の議論がなされていた前年より、すでに今度は河南省各地での十字架強制撤去が始まり、今年9月には北京で最大規模だった家庭教会・錫恩教会(信徒数約1500人)が取り締まりを受けている。

 こうした河南省や北京で強まる政府当局の管理・統制の強化に対して、8月末、王怡牧師を筆頭とする29人の起草者・署名者により《キリスト信仰のための声明》が出され、10月末までに400人以上の家庭教会の指導者たちの賛同署名が集まった。

 同声明文では「我々は、こうした公権力に訴えた不義の挙が中国社会に深刻な政教衝突を生み出すと考える。これらの行為は人類がもつ「信仰・良心の自由」に違反し、普遍的な法治の原則にも反する」と政府当局を強く非難している。また同声明文の末尾では「我々は福音の故に一切を損失すること、自由を失うこと、命の代価を支払うことを引き受ける準備がある」と述べるなど、起草者・署名者たちは、自分たちが逮捕・拘束される覚悟もしていた。

 王怡牧師が逮捕・拘束されてから2日後の12月11日、もし逮捕された場合、48時間後に公開するようにと数か月前に王怡牧師自身があらかじめ書きまとめていた《私の声明:信仰的不服従》と題する文書が教会によって公開された。同声明において王怡牧師は、「私は中国共産党政権の教会迫害や、人々の信仰の自由・良心の自由を奪う罪悪に対して、大きな嫌悪と怒りを覚えている」「私は中国共産党政権の教会に対する迫害が極めて悪しき犯罪行為であると考えている。キリストの教会の牧師とし、私はこのような罪悪に対して厳しい非難を公にしなければならない」「教会とイエス・キリストを信じる中国人とに対する迫害こそが、中国社会の最も邪悪で、最も恐ろしい罪悪である」と、中国政府のキリスト教迫害を「罪悪」として強く告発している。

 しかし、同時に王怡牧師は「社会制度や政治制度を変革しようとする一切のことは私が召された使命ではなく」、あくまで「非暴力によって、そして平和と忍耐の内に、聖書と神に反するあらゆる人間の法律に敢えて背く」ことであると述べ、自身の言動はあくまで「信仰的不服従」であり、自身の抵抗は「権利擁護運動や市民的不服従といった政治運動」では決しなく、あくまで彼自身の信仰の問題であると強調している。

秋雨之福教会の礼拝(秋雨之福教会の公式フェイスブックより)

 秋雨之福教会の取り締まりと王怡牧師の逮捕・拘束からすでに1週間以上が経過しているが、その間、中国各地の家庭教会に対する取り締まりがなされていることがSNSなどを通して伝え漏れてきている。宗教事務条例の改訂以降、公認教会の三自教会も「違法活動」を行わないようにという当局からの強い圧力を受けており、クリスマスを前にして、「18歳未満および非キリスト者の者をクリスマスの活動に連れてきてはならない」という公告を止むを得なく出すなどの対応を強いられている。今後、政府当局によるキリスト教に対する圧力を始め、ウイグル族のイスラム教徒、チベットのチベット仏教徒などに対する当局の対応がどのようになっていくのか、注視していかなければならない。

王怡牧師《私の声明:信仰的不服従》(原題「我的声明:信仰上的抗命」) 2018年12月18日

王怡牧師ら29人による《牧者署名:キリスト信仰のための声明》(原題「牧者聯署:為基督信仰的声明」) 「家の教会」指導者ら456人が賛同 2018年11月3日

(松谷曄介=日本基督教団筑紫教会牧師)

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